JリーグPRESSBACK NUMBER
なぜ将棋? レッズ小泉佳穂が影響を受けた羽生善治の“直感力” 自宅では毎日1時間「まだ強くなれる」
posted2021/08/13 11:02
text by
杉園昌之Masayuki Sugizono
photograph by
L:Naoki Morita/AFLO SPORT R:Keiji Ishikawa
Jリーグ公式ツイッターで『ドリブルからシュートまで何を考えていたのでしょうか?』と質問されたときの返答が興味深かった。
《実際は考えている、というよりは、経験則による直感の連続に近いかなと思います》
浦和レッズの小泉佳穂が20節アビスパ福岡戦でJ1初ゴールを決めたときのコメントだ。ピンときた人もいるかもしれない。今季、J2のFC琉球から加入した24歳は無類の将棋好きを公言し、棋士の著書も読み漁っている。ツイッターに残した哲学的な言葉は、まさに羽生善治著の『直感力』(PHP新書)にも書かれていることなのだ。本人は影響を受けていることを否定せず、静かな口調で話し始めた。
「羽生先生の考え方はすとんと胸に落ちることが多いんです。長考(長く考える)するよりも第一感(最初の思いつき)のほうが正しいことが多いというのも、素直にうなずけました。サッカーは将棋よりも時間のないスポーツです。成功体験から導き出される一瞬の判断が直感。サッカーは、その連続ですから。羽生先生の本や記事を読むようになり、サッカーを感覚だけではなく、より論理的に考えるようになりました」
リスクを恐れない姿勢
新生レッズの攻撃をけん引する小泉の持ち味は、直感を信じた独創的なプレーを次から次に失敗を恐れずに繰り出せるところ。リスクに対する、羽生の考え方にも共感している。
「結果を出していても、タイトルの懸かった対局で新手を使ったり、あえて相手の得意戦法に乗るとか、『リスクを冒して挑戦を続けていかないと成長はない』と言うのは本当にそうだなと。いままで無意識にしてきたことを肯定してもらえたような感じでした。僕もずっと大事にしてきたこと。チャレンジすれば、ミスが増えて、調子を落とすこともあるのですが、それをしないといま以上にうまくなれません。何をするにしても、極めるためにはリスクを取って、新しいチャレンジができるかどうかがカギになります」