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「人生で一番泣きました」専大松戸・吉岡道泰が悔やむセンバツの後逸…逆転満塁ホームランで掴んだ“リベンジの夏の甲子園”
posted2021/08/15 17:02

センバツ1回戦、中京大中京戦で打球に飛び込む専大松戸・吉岡。この悔しさを胸に甲子園の地に再び戻ってきた
text by

高木遊Yu Takagi
photograph by
KYODO
1球に泣いた男が、再び1球に泣いた。
7月21日、専大松戸vs.木更津総合の全国高等学校野球選手権千葉大会決勝は6対6のまま、延長13回のタイブレークにまで持ち込まれる大熱戦になった。
試合を決めたのは専大松戸の1番・吉岡道泰だった。13回裏、無死満塁で2ボール1ストライクからの甘く入った球を迷わず振り抜くと、打球は高々と上がり、ZOZOマリンスタジアムのライトスタンドに飛び込んだ。劇的なサヨナラ満塁優勝本塁打。
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吉岡はダイヤモンドを回りながらスコアボードの数字を見た。これが現実であることを再確認すると、「甲子園でリベンジができるんだ」と溢れる涙を抑えることができなかった。
「絶対に捕れると思って」
約4カ月前の3月25日、吉岡は「人生で一番泣きました」というほどの悔し涙を甲子園で流していた。
センバツ1回戦、専大松戸は優勝候補である中京大中京と戦った。両校無得点のまま進んだ7回2死二塁から中京大中京・櫛田理貴が放った打球はレフトを守る吉岡の前に。「絶対に捕れると思って飛び込んだのですが」とダイビングキャッチを試みたものの、打球のドライブは想像以上だった。吉岡のグラブをすり抜け、ボールはフェンスまで転々として、2ランランニング本塁打に。これがこの試合での両校唯一の得点となってしまった。
時が経っても悔しさは強く残ったまま。夏の県大会前に話を聞いても「あれが決勝点となって悔しかったですし、打ってもノーヒット。チームのみんなに迷惑をかけたという思いで立ち上がることができませんでした」と、その思いはそう簡単には消えない。