Jをめぐる冒険BACK NUMBER
「ここで点を取ったら“もうひとつ上の上田綺世”に」 五輪直前のケガも選出に感謝…“恩返しになる結果”で決勝への扉をこじ開けろ
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byJIJI PRESS
posted2021/08/03 11:03
NZ戦では自ら挙手し、1人目のPKキッカーを務め上げた上田綺世。準決勝以降はぜひ流れの中からの一撃が見たい
ファルカオ、インザーギやラウールのような“嗅覚”を
「(目標とする選手は)強いて言えば(ラダメル・)ファルカオ選手ですね。動き出しだったり、ゴール前での嗅覚だったり、ワンタッチゴールが多いんですけど、自分の中では"ごっつあんゴール"が多い選手は本当に貴重だと思っていて。形がどうであれ、ワンタッチで決めれば、自分の得点。そういうところにいて、決められる選手がいいFWだと自分は思っている。(フィリッポ・)インザーギやラウールもそう。ゴール前でワンタッチで決められるポジショニングと抜け出し、(マークを)剥がす能力が長けている選手に僕は魅力を感じる」
理想のストライカー論を語ったあと、プロを夢見る大学生らしく、野心も覗かせた。
「周りがプロの中でアマチュアですけど、どんどん名前を売って、法政の上田綺世という名前を多くの人に知ってもらいたい。ここから広まっていくといい」
数多くいるFW候補のひとりに過ぎなかった上田が、東京五輪代表チームにおける存在感を高めるのは、2018年8月にインドネシアで開催されたアジア大会だった。
準優勝に輝くこの大会で主にスーパーサブとして起用され、5試合3得点と結果を残すのだ。決勝トーナメント1回戦のマレーシア戦、準決勝のUAE戦はともに1-0の辛勝だったが、決勝点を奪ったのは、いずれも上田だった。
上田の言葉は、いつも刺激に満ちていた
決勝ゴールを決めたマレーシア戦のあと、記者会見の壇上に森保監督とふたり並んだ上田の語り口も堂々としたものだった。
「グループリーグで自分は多くのシュートを打って、チャンスも作っていたけれど、点を取れなかった。国を背負って戦う選手として、決めなきゃいけないですし、結果には絶対にこだわらないといけなくて。自分は大学生なので、プロに負けたくないという気持ちもあるし、絶対に何かを持ち帰ろうと強い気持ちを持って毎回臨んでいる。この試合でまたひとつ成長できたと思うし、ベスト8に行けたことで自分の成長する場がさらに増えて、すごく嬉しく思います」
会見場には日本人記者はもちろん、外国人記者の姿もあった。そうした場には慣れていないはずの大学生による立派なスピーチに、感心した日本人記者は少なくなかったはずである。
その後も上田の言葉は、いつも刺激に満ちていた。