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「ここで点を取ったら“もうひとつ上の上田綺世”に」 五輪直前のケガも選出に感謝…“恩返しになる結果”で決勝への扉をこじ開けろ 

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飯尾篤史

飯尾篤史Atsushi Iio

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photograph byJIJI PRESS

posted2021/08/03 11:03

「ここで点を取ったら“もうひとつ上の上田綺世”に」 五輪直前のケガも選出に感謝…“恩返しになる結果”で決勝への扉をこじ開けろ<Number Web> photograph by JIJI PRESS

NZ戦では自ら挙手し、1人目のPKキッカーを務め上げた上田綺世。準決勝以降はぜひ流れの中からの一撃が見たい

自分が外したまま終わるのが嫌だっただけです

「僕が1本目を決めてもPK戦は終わらないので、取り返せないことは分かっていたけど、立候補しないで終わっても悔しいだけというか、自分が単純に気に食わなかったです。自分が外したまま終わるのが嫌だっただけです」

 チームを90分で勝たせられなかった責任と、ストライカーとしての自覚が上田を突き動かしたのだろう。

 上田の勇敢な姿勢について、森保監督は試合後の会見で称えた。

「綺世は2017年のチーム立ち上げとなったタイでの大会で、PKを蹴って外しました。そうしたことを振り返っても、このチームで俺が決めてやるという思いを持って先陣を切ってくれたのは素晴らしかった」

 ああ、そういえば……。2017年12月、タイで行われた件のM-150カップを取材したにもかかわらず、上田がPKを失敗した事実は、記憶からすっかり抜け落ちていた。

 だが、この大会における彼のプレーはよく覚えている。それも極めて鮮明に。

まるで柳沢敦のようなロジカルな動き

 鹿島アントラーズノルテジュニアユースの出身だがユースには上がれず、鹿島学園高、法政大と進んだ上田にとって、日の丸を背負う初めての大会だった。

 タイとの初戦は15分間の出場にとどまった上田にチャンスが回ってきたのは、北朝鮮とのグループステージ第2戦だった。スタメン出場を飾ると、15分に左クロスに対して巧みにマークを外し、ヘディングでゴール。56分にはスルーパスを引き出し、2点目を蹴り込んだ。

 このとき、上田は法政大の1年生だったが、クロスにせよ、スルーパスにせよ、ボールを呼び込む動きやマークを外す動きが鮮やかで、極めてロジカルだったのだ。

 オフ・ザ・ボールの質の高さは、まるで柳沢敦のようだな――。

 初めて見た上田のプレーに、鹿島のレジェンドを重ねたことを覚えている。

 こうしたプレー面と同じくらい印象に残っているのが、彼の発した"意思のある言葉"だ。

【次ページ】 ファルカオ、インザーギやラウールのような“嗅覚”を

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