Jをめぐる冒険BACK NUMBER
「ここで点を取ったら“もうひとつ上の上田綺世”に」 五輪直前のケガも選出に感謝…“恩返しになる結果”で決勝への扉をこじ開けろ
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byJIJI PRESS
posted2021/08/03 11:03
NZ戦では自ら挙手し、1人目のPKキッカーを務め上げた上田綺世。準決勝以降はぜひ流れの中からの一撃が見たい
決勝トーナメントに突入し、ニュージーランド戦で再びベンチスタートに戻ったのは、戦術上の問題か、それともコンディションの問題か……。
自身の状態について「僕が話すつもりはない」と語ったが、上田が覚悟を決めているのは確かだろう。
ニュージーランド戦でPKを蹴る直前、上田はボールに頭を当てて祈りを込めた。
「FWが点を取ったり、何かの節目を迎えるときには必ず運が必要だと思う。自分が今まで背負ってきたものをここで出さないといけない。あのひと蹴りで僕の人生を、これまでの人生を繋げることにもなるので、その念を込めたというか」
「持っている」の一言で片づけるのも違うかな
その言葉を聞いて思い出したのは、"持っているか否か"について訊ねたときの上田の返答だ。
「今、(鹿島の一員として)この場にいるということがまず、"持っている"と思う。ただ、"持っている"のひと言で片付けるのも、違うかなと思います。これまでのサッカー人生を振り返れば、持ってないこともありましたし。ただ、プロになるという目標を叶える過程で回収できたというか。ここで点を取ったら、"もうひとつ上の上田綺世"になれるというタイミングで点を取れたり、ポイント、ポイントで掴んできたから、今があるんじゃないかと思います」
ストライカーにとって必要な運を、上田はスペイン戦で引き寄せることができるだろうか。
出場時間が何分であれ、ゴールを決めれば、人生が変わるのがサッカーだ。"もうひとつ上の上田綺世"になるべきタイミングが、今まさに訪れている。鮮やかにボールを引き出し、力強くネットを揺らし、決勝への扉をこじ開けてほしい。
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