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瀬戸大也の“突然の復調”はなぜ起きたのか? 「苦しい生活になると思うけれど、食らいついて生きていきたいです」
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAsami Enomoto/JMPA
posted2021/07/31 11:04
200m個人メドレーで4位入賞を果たした瀬戸大也。400m個人メドレーでのまさかの予選落ちから数日、大きな注目を集め続けてきた
自由形で追わなかったのか、追えなかったのか
前半から先頭に立ち、最後の自由形で大きく順位を落とし、結果、タイムも伸びずに予選落ちという結果につながった。その泳ぎについて、決勝へ向けて体力を残すことを考えていたこと、そして決勝に進めるラインについて「読み違えがありました」と話した。
余力を残して勝ち上がるという戦略自体に問題はない。メダルを争う立場にいれば、予選、準決勝がある種目なら準決勝、決勝とタイムを上げていくことを考える。予選で100%出し切るとは考えない。
ただ、最後の自由形で次々に抜かれて順位を落とし、それでもペースアップしなかった、追わなかったのは、予選を通るためにはリスクが大きすぎる。前の組までに予選としては速いタイムで終えた選手たちがいたことを思えばなおさらだ。だから、最後に余力がなかった、追えなかったのではないか、という推測は成り立つ。自由形に強い海外勢を想定し、前半リードを奪う展開で進めていたが、4つの泳法をこなす中でどうペース配分をしてレース全体を組み立てるか、その戦略の立て方に問題はなかっただろうか。
あるいは、代表選手の中で、最後まで長野県の高地に残りトレーニングした影響はどうだったか。一般論としては高地トレーニングの疲労回復にはそれなりの時間を要する。
強化、戦略などなどにおいて、もう1つ、客観的な視点があれば、状況は変わっていたかもしれない。
「パリ五輪まで3年、頑張れます」
いずれにせよ、レースは終わった。
「今回は結果で恩返しできませんでした。これからの競技人生で『応援してよかった』と思ってもらえるような成果を出していきたいと思います」
そして先を見据える。
「パリ(五輪)まで3年、頑張れます。結果を出せなかったことで、苦しい生活になると思うけれど、食らいついて生きていきたいです。頑張っていけば、今回よりもきっといい結果を出せると思います」
メダルは獲れなくても、しっかり前を向ける形で終えることができた。この大会の経験を明日につなげることもできる。
瀬戸大也の挑戦は、これからも続く。
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