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[師弟で叶えた戴冠]大橋悠依「世界一の歓喜は2つの戦略から」
posted2021/07/30 07:05
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph by
Hiroyuki Nakamura
「自分が金メダルを獲れるなんて本当に思っていなかった」。日の丸を背負って5年。過去何度も挫折を味わってきた遅咲きの女王が、五輪の大舞台で大輪の花を咲かせるまで。
左右の手で両目の涙をそっとぬぐった。
「オリンピックチャンピオン」
東京アクアティクスセンターに場内アナウンスが響くと、大橋悠依の目がみるみる潤んでいった。
「金メダルを獲るなんて思っていなかった。夢みたい。正直、実感がなかったのですが、表彰台に上る前に『オリンピックチャンピオン』と紹介され、うれしさがあふれました」
7月25日の競泳女子400m個人メドレー決勝を4分32秒08で制した。メインポールには日の丸が揚がっていた。日本競泳陣にとっての今大会メダル1号は、お家芸と言われながら1964年東京五輪ではひとつも獲ることのできなかった金メダルだった。
前夜の予選を4分35秒71の好タイムで泳ぎ、3位で通過していた。決勝では最初のバタフライを3位で入ると、得意の背泳ぎで順位を上げ、3種目めの平泳ぎでスッと首位へ。最後は自由形を得意とする米国勢を振り切り、真っ先にゴールした。決勝のタイムは予選より3秒63も上げていた。
レース前は緊張がマックスに達していた。平井伯昌コーチに「緊張してます、緊張しています」と繰り返した。返ってきたのは「緊張していて当たり前。順位もタイムも気にしなくていい。自分のできること全部やれば大丈夫」という言葉。