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瀬戸大也の“突然の復調”はなぜ起きたのか? 「苦しい生活になると思うけれど、食らいついて生きていきたいです」
posted2021/07/31 11:04
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Asami Enomoto/JMPA
レース直後のインタビューでの笑顔と言葉が、胸中をのぞかせた。
「とにかく自分が今できるコンディションの中で全力は尽くせたのかなと思います」
「もっといい結果をイメージしながら頑張ってきて、思い通りにはいかなかったですけど、非常に素晴らしい大会でした。ほんとうに開催されるかも分からない中で自分が活躍する場所をいただけて、もっと自分自身は活躍したかったが、今できる精一杯のことはやれたのですっきりしています」
7月30日、競泳男子200m個人メドレーが行なわれ、瀬戸大也は4位でレースを終えた。
最初の種目400m個人メドレーは予選落ち、続く200mバタフライは準決勝で敗退。どの種目も優勝を期待される中での思いがけない結果に、少しずつ厳しい表情を浮かべるようになっていた。
「公介とグーでタッチしました。すごく心強かった」
迎えた200m個人メドレーは予選16位と辛うじて通過、準決勝は一転、快調な泳ぎを見せての決勝だった。
スタート。瀬戸は抑え気味に進む。バタフライ、背泳ぎを終えて折り返すとペースを上げていく。最後、3着争いはどちらが勝ったか判別しづらいほどの接戦になった。0秒05、タッチの差での4位。ようやく出し切れたという思いに、笑顔が浮かんだ。そして、長年のライバルであり盟友と言ってよい存在、萩野とともに決勝に進み、泳いだことをかみしめた。
「久しぶりにこの世界大会で公介と入場するとき、直前にグーでタッチしました。すごく心強かったです」
苦しむ瀬戸を救い、変えたのは
晴れやかに個人種目すべてを終えた瀬戸は、怒涛と言ってもいいような時間を過ごした。
どん底のような状態にまでなり、そこから這い上がった。
レースで追えば、変化は200m個人メドレーの、16位と辛うじて通過した予選と、全体の3位で決勝進出を決めた準決勝の間にある。