酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
「台湾の次に日本野球が好き」「東京五輪はメダルを狙えた!」 呉念庭・宋家豪らがいるのに…ファンが嘆いた台湾「出場辞退」の“その先”とは
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byPenta Press/AFLO
posted2021/08/05 06:01
プレミア12では躍進した台湾代表。NPBにもなくてはならない人材供給源だ
それと前後して中国、オーストラリアも代表チームの派遣を断念。世界最終予選はアメリカ大陸予選からまわったドミニカ共和国、ベネズエラ、ヨーロッパ・アフリカ予選からのオランダの3カ国で争われ、ドミニカ共和国が最後の6カ国目になった。
NPBで呉念庭や宋家豪らが元気だったが
7月に入って、出場6か国の出場選手ロースターが発表された。
東京五輪にはMLBの26人枠(今季は特例で28人枠)に入っているメジャーリーガーは参加しない。各国はマイナーリーガー、引退した選手、そしてNPBでプレーする選手を中心にチームを編成していた。端的に言えば日本、韓国を除いて「飛車角金銀落ち」という印象の顔ぶれだ。
しかし台湾は、CPBLのトップ選手をそろえることができるほか、NPBでプレーする選手も起用することが可能だ。
とりわけ今季のNPBでは、台湾勢が非常に元気なのだ。
台湾の国民的英雄になっている陽岱鋼こそ巨人のファームにいるが、今季は呉念庭(西武)、宋家豪(楽天)の2人がオールスターに出場、王柏融(日本ハム)も中軸打者として活躍、さらに2019年のプレミア12でも活躍した張奕(オリックス)、MLBで59勝を挙げ今季から阪神でプレーするチェン・ウェイン(陳偉殷)、育成枠には投手の王彦程(楽天)もいる。特に陽岱鋼にとっては、健在をアピールする絶好のチャンスになったはずだ。
彼らNPB勢が加われば、寄せ集めのアメリカ、ドミニカ共和国だけでなく、日本や韓国とも互角に戦えるとみられていた。
台湾はまだプロ選手の出場が認められなかった1992年のバルセロナ大会で銀メダルを取ったが、プロ選手が出場するようになった2000年以降は5位が最高だ。
「出場していれば、今回は銅メダル以上が十分に狙えたと思う。手の内を知る日本とも互角に戦ったと思うので残念だ」
件の台湾のジャーナリストはこう語る。
一方で筑波大学硬式野球部出身で、CPBLや日本の独立リーグでもプレーし、現在は台南市で野球関連会社を経営する余書農氏は、
「台湾は5、6月と一気に感染が蔓延した感じで、リモートワークやオンライン学級が強いられている状態です。7月に入ってやっと少し落ち着きが見えて来た所です。
ここ数カ月はコロナの蔓延で状況が厳しかったので、日本で活躍している選手は台湾社会に活力を与えている感じでした。今回のオリンピック最終予選に関してはコロナ禍の中、状態が思わしくないメキシコでの開催なので、辞退しても仕方がないという感じですね」
とも語っていた。
ただ、台湾球界はもう「その先」を見つめている。