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22歳山本由伸は何がスゴい?「ホームラン打ちたい」野球少年が“球道者”の顔をのぞかせた瞬間とは《侍ジャパン》 

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米虫紀子

米虫紀子Noriko Yonemushi

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photograph byMasaki Fujioka/JMPA

posted2021/07/29 11:04

22歳山本由伸は何がスゴい?「ホームラン打ちたい」野球少年が“球道者”の顔をのぞかせた瞬間とは《侍ジャパン》<Number Web> photograph by Masaki Fujioka/JMPA

侍ジャパン初戦のマウンドを任せられた山本由伸(オリックス)

 山本はプロ入り後、2年目にカットボール、3年目にツーシームというように武器となる球種を増やしていったが、ツーシームの習得は偶然の産物だった。

 テレビで元メジャーの大投手、ランディ・ジョンソンが投げ方を説明しているのをたまたま見て、やってみようと思ったという。当時、こう話していた。

「(国際大会の時に)日本人のバッターは外国人投手のちょっと動く球が打ちにくい、課題だ、みたいによく言われるじゃないですか。ってことは、自分もそれを投げたら打たれない。だからちょっと気になっていました。で、たまたま見たテレビで、ランディ・ジョンソンが投げ方を話してて。握る縫い目だけが違って、腕の振りはストレートと同じだったので、それを見た時に、『これはいけるな』と。その説明が簡単そうだったし、やってみても意外と簡単でした。

 今年(2019年)は先発(に転向)するというのが(球種を増やす)理由の一つではあるんですけど、もっと原点には、抑えたい、ただいいピッチャーになりたい、野球が上手になりたいっていう気持ちがあるから。だからそれをテレビで見た時にも、試してみようと思ったんですよね」

 好奇心旺盛で貪欲だが、自分に必要なものと、必要ないものを嗅ぎ分ける嗅覚も持っている。さらに、必要だと思ったことは誰に何を言われても変えない芯の強さがある。

周りに流されない力

 山本はプロ入り後、知人に紹介された施設で、それまでとはまったく違う体の使い方に取り組んできた。最初にそこを訪れた時に、「これだな」と感じたという。ウエイトトレーニングはいっさい行わず、体の内を整える独自のトレーニングを積み重ねてきた。槍のような器具を投げる“ジャベリックスロー”もその一環だが、ほとんどが地道なトレーニング。それをコツコツとひたすら続けた。

 プロ2年目の自主トレやキャンプで、ジャベリックスローや新フォームを披露すると、周囲はざわついた。

「やり投げと投球は違う」

 そうした否定的な声が耳に届き、19歳にとってはさすがにこたえたはずだが、それでも自分の信じる道を曲げなかった。

「僕のやっているトレーニングを理解しようともせずに否定されている感じだったので、聞く理由はなかったですね」

 ここが分岐点だったかもしれない。プロの世界では、周りに流されず自分を持っている選手が上にいく。

【次ページ】 ストレートは「まだまだ」

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