猛牛のささやきBACK NUMBER
22歳山本由伸は何がスゴい?「ホームラン打ちたい」野球少年が“球道者”の顔をのぞかせた瞬間とは《侍ジャパン》
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byMasaki Fujioka/JMPA
posted2021/07/29 11:04
侍ジャパン初戦のマウンドを任せられた山本由伸(オリックス)
山本は宮崎県都城高校から、2016年のドラフト4位でオリックスに入団。3年目に21歳で最優秀防御率のタイトルを獲得し、昨年は奪三振王に輝いた。5年目の今年は、勝利数、防御率、奪三振数でトップに立っている。今や東京五輪で金メダルを目指す日本のエースである。
今年7月、その山本に、思い描く理想の試合は? と尋ねた。かつてオリックスのエースだった金子弍大(現・日本ハム)に同じ質問をした際には、「27球で終わる試合」と答えた。
山本は「なんだろう?」と少し悩んで、「わかんないです。勝てたら嬉しい。勝てる試合が一番いい試合なんで」
では野球選手として一度はやってみたいということは? と聞くと、こう言った。
「ホームラン打ちたい」
さらに続ける。
「盗塁したい。無理だけど、無理だからしたいんです。それで、リクエストされたい」
予想外の答えに面食らった。まるで野球少年がそのまま大きくなって、プロの世界で戦っているよう。語弊があるかもしれないが、山本にとってはプロのグラウンドも野球界も、大きな遊び場なのかもしれない。人生をかけた真剣な遊び場だ。
仕事になっても「そんな変わりはない」
今季開幕前に「山本投手にとって野球とは?」と聞くと、「僕の好きなこと」と答えた。
「昔は楽しかったけど、それが仕事になると同じようにはいかない」と話す選手も多いが、山本はこう言った。
「お金をもらいながらやるというのはすごい変化なので、もちろん変わった部分もたくさんありますけど、気持ちの面というか、野球との向き合い方に関しては、そんなに変わりないかなと思います」
常に結果を求められるプロの世界で、楽しめること自体が一つの才能。楽しんでいるからこそ向上心にも限界がない。遊び心と向上心が山本の進化の根底にある。