猛牛のささやきBACK NUMBER
22歳山本由伸は何がスゴい?「ホームラン打ちたい」野球少年が“球道者”の顔をのぞかせた瞬間とは《侍ジャパン》
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byMasaki Fujioka/JMPA
posted2021/07/29 11:04
侍ジャパン初戦のマウンドを任せられた山本由伸(オリックス)
2年目はリリーフとして勝ちパターンの8回を支え、3年目は先発ローテーションに入り、最優秀防御率を獲得。結果を出すにつれ否定的な声は消えていった。
そして日本のエースと言われる存在に。多彩な変化球はどれも一級品で、ストレートの最速は158キロ。特にこの2年は「強いストレート」にこだわってきた。すでに日本の強打者をねじ伏せているストレートだが、山本自身はこう語る。
「まだまだです。ストレートにはいろんな要素があるから。球速もその1つですけど、スピードだけがすべてじゃない。スピン量だったり、角度だったり、リリースの感覚だったり……まだ(理想の)足元ぐらいじゃないですかね」
野球少年が、球道者の顔をのぞかせた。
世界を相手にしても
山本の壮大な遊び場は世界へと広がる。
2019年のプレミア12ではリリーフとして優勝に貢献した。
そして、エースとして臨むこの東京五輪では、オープニングゲーム・ドミニカ共和国戦の先発を任された。
金メダルを期待される侍ジャパンの初戦。初回はさすがに顔がこわばり、力みが見えたが、立ち上がりを無失点でしのぐと、次第にいつものように自在にボールを操るようになっていく。普段以上にカーブを使って緩急をつけ、フォークで三振を取る。6回を投げ2安打無失点、9奪三振で役割を果たした。
ただ、山本が投げている間の日本の安打は、オリックスの主砲・吉田正尚の1本だけと、援護に恵まれなかった。7回にリリーフした青柳晃洋(阪神)が2点を奪われ、1-3とリードされて9回裏を迎えたが、ドミニカのミスから畳み掛けた日本が一気に3点を奪い、劇的なサヨナラ勝利を収めた。
援護がなく重苦しいマウンドだったが、きっと山本は言うだろう。
「勝てたら嬉しい。勝てた試合が一番いい試合」
エースの力投が実り、劣勢を跳ね返しての逆転勝利は今後に弾みをつけそうだ。
次に山本が登板するのは、メダルへとつながる大一番。そんな展開を期待したい。