サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
中西哲生が解説する“メキシコ戦の明暗” 久保建英ゴールは「世界的にもハイクオリティ」だけど…〈フランスの攻略法とは?〉
text by
中西哲生+戸塚啓Tetsuo Nakanishi + Kei Totsuka
photograph byGetty Images
posted2021/07/27 17:04
2-1で難敵メキシコを退けた日本。ただ終盤には直接FKから失点し、その試合運びには課題も見えた
メキシコを追い込んだ選手たちの“裏への飛び出し”
この試合では、相馬勇紀のプレーにも触れるべきでしょう。
南アフリカ戦からの唯一の入れ替えとして先発に名を連ねた彼は、オンザボールの局面でアグレッシブに仕掛けました。VARでもたらされた11分のPKも、相馬がニアゾーンの深い位置まで侵入したことで獲得したものです。積極的で迷いのないその姿勢は、メキシコを追い詰めていきました。
相手の嫌がるプレーという意味では、背後を狙うことが徹底されていました。先制点の場面がそうでしたし、相手CBを退場へ追い込んだ68分の場面もそうでした。
ランニングを生かすパスも、クオリティが追求されていた。アバウトなパスではなくソリッドなパスが、相手の裏を突くランニングを際立たせていたのです。
相手が1人減っても「上手くクロージング出来なかった」終盤
2対0のスコアで11対10の数的優位に立った時点で、日本のテーマは「どうやって試合を終わらせるのか」になりました。2点差をしっかりと保ちながら、相手がスキを見せたら3点目を狙いにいく、というスタンスが求められたでしょう。
そう考えると、残り20分強の戦いぶりには課題が残りました。
11対10なのですから、必ずフリーの選手がいることになります。自分たちでボールを動かして、相手をいなすことができるのに、日本の選手たちからは余裕が感じられませんでした。
85分の失点は分かりやすいでしょう。
日本からみて左サイドで直接FKを与え、そこから失点をしてしまったのですが、そもそも直接FKにつながる反則をしてはいけないはずです。キッカーがフリーで蹴ることができ、ゴール前にあらかじめ人数をかけられる直接FKは、メキシコからすれば効率がいいのですから。
失点シーンだけではありません。アディショナルタイムにも、自陣右サイドで直接FKを与えてしまった。決定的なヘディングシュートを浴びたものの、GK谷晃生の好セーブで事なきを得ました。
この状況で直接FKを与えたらいけないのは、日本の選手も理解できていたはずです。だとすれば、彼らのプレーを阻害したのは何だったのか。