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久保建英の衝撃ゴールを“コーチ”中西哲生が徹底解剖「決まるフォームを遂行」〈強敵メキシコとどう戦う?〉
text by
中西哲生+戸塚啓Tetsuo Nakanishi + Kei Totsuka
photograph byJIJI PRESS
posted2021/07/24 17:02
後半26分、田中碧からのロングパスを受けた久保がそのまま先制ゴールを決めた
それによって、身体はゴールに対して横を向きます。GKにお腹を見せない身体の向きを作ることで、シュートコースを読まれにくくするのです。GKからすると目の前にDFが立っているので、さらにシュートフォームが見づらい。
シュートは軸足を抜いて蹴り足で着地します。軸足を地面から離したほうが、ボールにしっかりと力が伝わる。相手にシュートコースも読まれにくい。「軸足抜き、蹴り足着地」は、シュートを決めるためのフォームなのです。
シュートコースとしては、ふたつの選択肢がありました、左ポストの根元を狙うか、高さを出すか。後者の場合は、GKがセーブする手の外側から巻いて落とす軌道になります。ここでは根元を狙い、左ポストを叩いてネットを揺らしました。
久保が意識してきた“ゴールのための4ステップ”
得点を決めた直後の久保は、感情を爆発させました。しかし、トラップからフィニッシュまでの流れでは、一切の感情を消しています。
「ここで決めたい」という感情が沸き上がると、身体に緊張感が走り、力が入ってしまう。力んでしまいます。「ここで決めなければいけない」という気持ちが膨らむと、焦りに駆られてしまう。久保には「力みと焦りがすべてを狂わす」と伝えてきましたが、五輪の初戦という大舞台で、負けられない相手から、0対0のまま迎えた70分以降に、ゴールをこじ開けた──大きな価値を持つ一撃だったと言えるでしょう。
久保とのパーソナルトレーニングでは、W杯や五輪で得点することを意識してきました。そのために、軸足を抜いて蹴り足で着地する、シュートを打つ瞬間はGKにお腹を見せない、シュートコースを定める、感情を消す、といったことをセットでできるようにしていきました。南アフリカ戦のゴールから分かるように、一連の動きがテンポ感を持って遂行されています。アイススケーターが氷上で演技をするような、滑らかな動きでした。
次戦メキシコ「簡単な相手ではない」 どう戦う?
日本対南アフリカ戦に先駆けて行なわれたメキシコ対フランス戦は、メキシコが4対1で勝利しました。メキシコが強かったというよりも、フランスが良くなかったというのが個人的な印象ですが、いずれにしてもメキシコが得失点差で「3」のアドバンテージを得たことが、第2戦以降の戦いに影響してくるでしょう。