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候補は5駅…「国立競技場どこが“最寄り駅”か」問題 JR千駄ケ谷駅に中央線快速が止まらないナゾ《東京五輪》
text by
鼠入昌史Masashi Soiri
photograph byMasashi Soiri
posted2021/07/23 11:03
JR千駄ケ谷駅。新国立競技場へは徒歩で7分ほど。東京五輪に向けてリニューアル工事が行われた
このナゾに答えを出す前に、少しだけ千駄ケ谷駅前を歩いてみることにする。新宿駅で中央線快速から黄色い各駅停車に乗り換えて2駅。あっという間に千駄ケ谷駅に着く。ホームの向こう側(北側)には緑が生い茂る森。地図を見るとこれは新宿御苑である。階段を降りてコンコースを少し歩いて改札へ。
その途中に、でっかい将棋の駒が飾られたコーナーがある。千駄ケ谷駅が将棋会館の最寄り駅、ということで設けられた将棋コーナー。以前はホームの上に駒のオブジェが置かれていたが、駅のリニューアルに伴ってコンコースに将棋コーナーができた。「千駄ケ谷駅」と書かれた達筆の文字は、羽生善治九段によるものだという。この将棋コーナーを見て、国立競技場を目指す人たちは「ああ、ここは将棋の駅でもあるんだなあ」と思いを巡らす。
改札口を出ると、すぐ頭上には首都高新宿線が走っている。首都高の下をくぐった先には、津田塾大学の千駄ヶ谷キャンパスと東京体育館。この体育館もオリンピックの会場のひとつだ。そして東京体育館の脇を抜けて少し歩くと、国立競技場が見えてくる。駅を出て高速道路の下をくぐってスタジアム。まるで阪神甲子園球場みたいである。
なぜ「スポーツ」も「伝統文化」も根付いたのか?
将棋コーナーでもわかるとおり、千駄ケ谷駅にあるのは東京体育館や国立競技場だけではない。体育館側、つまり明治神宮外苑側の反対側には、閑静な住宅地ともいいたくなるような静かな街並みが広がっている。その中には件の将棋会館や鳩森八幡神社、国立能楽堂などがある。入り組んだ路地をずっと歩いていくと明治通りに出る。そこからさらに少し歩けば、原宿駅も実はそれほど遠くない。コロナ前、神宮球場で我らがタイガースが敗れた夜に、適当に酒を飲みに行ったのはこのあたりのどこかにあった店である。