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アスリート世界1位の“年収197億円”でも“絶体絶命”「最強の問題児」マクレガーが挑む因縁の相手・ポワリエとの“決着戦”の行方は?
text by
堀江ガンツGantz Horie
photograph byGetty Images
posted2021/07/10 11:04
3度目の対戦となるジャスティン・ポワリエ(左)とコナー・マクレガー(右)
この試合、1ラウンドはマクレガーがパンチとケージレスリングで優位に進めたが、2ラウンドにポワリエがふくらはぎを破壊するカーフキックでマクレガーの脚を潰し、最後はパンチのラッシュで逆転のTKO勝利を挙げた。
マクレガーは以前、UFCでネイト・ディアスとヌルマゴメドフに敗れた際は、テイクダウンされてからの寝技でフィニッシュされている。そのため、ポワリエ戦の前に肉体改造に着手。パワーアップに成功し、テイクダウンディフェンスも格段に成長。“寝かされない”ことで、ストライカーとしての総合力が上がっていた。
しかし、パンチに自信を持っているからこそ、スタンドでは前脚に重心がかかり、その脚をカーフキックで狙われ、MMAキャリア初のKO負けを喫してしまったのだ。ポワリエのセコンドは、堀口恭司のセコンドとしても知られる、名門アメリカン・トップチームの名参謀マイク・ブラウン。堀口が昨年大晦日のRIZINで、朝倉海をカーフキックでKOしたのと同様に、“パンチャー殺し”のカーフキックという作戦がズバリ的中したかたちだ。
ポワリエ陣営がどんな“秘策”を持ってくるか
こうしてマクレガーとポワリエの対戦成績は1勝1敗となり、今回行われる半年ぶりのダイレクトリマッチは、3度目の決着戦となる。ポイントはやはり、ポワリエ陣営がどんな“秘策”を持ってこの試合に臨んでくるかだろう。
ポワリエはこれまで数々の強豪をKOしてきたUFCライト級屈指のストライカーであるが、パンチのテクニックとスタンドでの空間を支配する能力はマクレガーがやはり一枚上。しかも、マクレガーは寝技という弱点を克服するため、テイクダウンディフェンス能力を大きく向上させていたので、下馬評は「マクレガー有利」だった。それを覆す作戦がカーフキックだったわけだが、今回は当然、マクレガーがカーフキック対策をしっかりしてくることが予想される。この一見、“穴”がなくなったマクレガーを倒すために、ポワリエ陣営がどんな作戦を用意してくるのかが、試合を大きく左右するだろう。
もう一つのポイントをあげれば、メンタルの問題がある。もう後がないマクレガーに対し、前回勝っているポワリエは精神面でも有利。これまでマクレガーは、ネイト・ディアスに敗れたあとはダイレクトリマッチで勝利し、ヌルマゴメドフに敗れたあとは、ドナルド・セローニに秒殺勝利と、前回の負けを払拭する強さを見せてきた。
最強の問題児“最後の姿”か、“キング”復活の祝祭か
また、試合前の乱闘騒ぎや、選手バス襲撃事件など、数々の不祥事を起こしてきたマクレガーだが、スキャンダルまみれになりながらも、自らの存在を巨大化させ続けられたのは、試合で世界中のファンを驚愕させる強さを見せてきたから。それがヌルマゴメドフに敗れ、ポワリエに連敗を喫してしまえば、その神通力も消え失せる。マクレガーにとっては、これまでのキャリアで最も追い込まれた立場での絶対に負けられない闘いなのだ。
ポワリエvs.マクレガーが行われる「UFC264」は、コロナ禍以降、ラスベガスでの大会では初となる会場のフルキャパシティを使った有観客として行われ、当日は2万人以上の大観衆でアリーナが埋め尽くされる。はたして、そこでファンが目にするのは、史上最強のスーパースターにして最強の問題児“最後の姿”なのか、それとも“キング”復活の祝祭か。ポワリエvs.マクレガー“3”の結末は、今後のMMA界を大きく変える。