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赤字続きでドン底だった地方競馬の“犠牲”に…“消えた競馬場” 栃木で愛された「宇都宮競馬場」今は何がある? 跡地に行った話
text by
鼠入昌史Masashi Soiri
photograph byJIJI PRESS
posted2021/08/31 11:06
宇都宮競馬場が輩出した名馬ドージマファイター。「栃木の怪物」とも呼ばれた。写真は27連勝を記録したレース(足利競馬場で撮影)
このスタジアムは、「カンセキスタジアムとちぎ」というらしい。より正確に言えば、栃木県総合運動公園陸上競技場といい、ネーミングライツで「カンセキスタジアムとちぎ」になった。完成したのは2020年。本来ならば5月6日にこけら落としとしてサッカーJ2・栃木SCのホームゲームが行われる予定だった。しかし、コロナの影響で延期になってしまい、Jリーグでは年末になって12月16日の栃木SC-ジェフユナイテッド千葉が最初の試合。そして2022年の栃木国体(「いちご一会とちぎ国体」というらしい)のメイン会場になることも決まっている。
と、すっかり宇都宮競馬場は装いを変え、Jリーグと国体のスタジアムになったのだ。駅からの道すがらにはいくつかの競馬場の痕跡が残されていたが、競馬場そのものは跡形もなく消えて、新品ピカピカの巨大スタジアムに生まれ変わっていた。
ただ、そうは言っても競馬場はそんじょそこらのスタジアムよりも圧倒的にデカい。1周1200m対1周400mだから宇都宮競馬場はカンセキスタジアムとは比べるまでもなくデカかった。
そのためか、スタジアムの傍は広場のようになっていて、その片隅では何やらまだ工事が続いている。どうもデカすぎた競馬場の跡地を持て余しているような気がしなくもないが、どうなのだろうか。
競馬場コースの“名残”か
競馬場時代の名残をもう少し探してみよう。以前訪れた目黒競馬場でもそうであったように、競馬場の楕円形の外周は消えた後も残されることが多い。そこでスタジアムの横を歩いてみることにする。するとスタジアムよりも二回り、三回り以上は大きい楕円の外周道路が確かに残っている。航空写真を見てもそれは明らかだ。
そこを馬が走っていたとはさすがにちょっと想像しづらいが、歩きながらここが1コーナー、ここがバックストレッチ、1周1200mだから3コーナーあたりから勝負どころかな、などと考えながら歩けば意外に楽しい。ちなみに宇都宮競馬場は右回り。陸上のトラックは左回りだから、カンセキスタジアムに変わって回り方は逆転している。