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赤字続きでドン底だった地方競馬の“犠牲”に…“消えた競馬場” 栃木で愛された「宇都宮競馬場」今は何がある? 跡地に行った話
text by
鼠入昌史Masashi Soiri
photograph byJIJI PRESS
posted2021/08/31 11:06
宇都宮競馬場が輩出した名馬ドージマファイター。「栃木の怪物」とも呼ばれた。写真は27連勝を記録したレース(足利競馬場で撮影)
とっくに空き家になっていると思われる古店舗なのだが、もう消えそうな文字で「馬具」とある。どうやら、競馬場現役時代には馬具屋さんだったのだ。競馬場がなくなれば馬具にも用がなくなるので、そのまま廃業して取り残されてしまったということか。
ちょっと寂しい気持ちになって先に進むと、今度は空き地を囲むフェンスにもっと直接的な文字が書かれていた。「第4駐車場 宇都宮競馬場」。がっちりとフェンスに覆われていて、栃木県による「平成18年1月1日以降立ち入りは禁止」といった注意書きも掲げられている。なのでもちろん中には入れず完全封鎖されているのだが、完全にここは競馬場の施設の名残りである。平成18年、つまり競馬場が廃止された2006年当時のまま手付かずになっている駐車場の跡地なのだ。
地方都市の郊外の小さな私鉄の駅前の、その住宅地の中に放置された競馬場の残滓……。それを見ると、競馬場の跡地そのものにも何かがあるのではないかと期待が高まってくる。
競馬場跡地にあったのは? 巨大スタジアムだった
そう思ってそのまま「競馬場通り」を歩いていく。すると……あった。競馬場の跡でもスタンドの残骸でもなく、とてつもなく立派なスタジアムだ。その手前の道路(つまり競馬場の外周道路)もきれいに整備されていて、つきあたりのセブンイレブンもなんだか真新しい感じ。その奥に、競馬場のそれとは明らかに別物の巨大スタジアムが忽然と姿を現したのである。