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無失点で16強進出もイングランドの看過できない不安 動きが重く、“決定機は1回だけ”のケイン頼みは危険な兆候だ 

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粕谷秀樹

粕谷秀樹Hideki Kasuya

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posted2021/06/29 17:03

無失点で16強進出もイングランドの看過できない不安 動きが重く、“決定機は1回だけ”のケイン頼みは危険な兆候だ<Number Web> photograph by Getty Images

大会の主役候補と見られていたケインだが、ここまでは無得点。ドイツ戦ではスタメン落ちの可能性も?

 例えば、ジャック・グリーリッシュだ。

 63分から出場したスコットランド戦における被ファウル数は4回。2020-21シーズンのプレミアリーグでも被ファウル数は最多の110回。要するにグリーリッシュが出場すればFKの機会が増えて、ハリー・マグワイアやジョン・ストーンズといった、イングランドが誇るストロングヘッダーの魅力を引き出せる。

 また、フォデンはシティでCL決勝まで戦っているとはいえコンディションは非常にいい。20代前半の若者とあって、レギュラーシーズンの疲労は感じられない。体力的ダメージが残っていたとしてもEUROに臨む高揚感が勝っている。したがって、ラウンド16以降は若手・中堅に託すべきではないだろうか。

プレー内容が伴わない選手を外すデータは揃う

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 イングランドはイタリアと並びグループステージを無失点で切り抜けた。自らのミスを省みず、仲間に責任転嫁するようなGKジョーダン・ピックフォードは態度を改めるべきだが、ここまで大きな綻びはない。

 一方、2得点はラウンド16進出チームのなかでは最低だ。攻撃陣の編成には一考の余地がある。例えば好調のフォデンをインサイドハーフに、グリーリッシュを左ウイングに起用し、攻撃のアイデアを高める工夫も必要だ。

 そしてブカヨ・サカは、右ウイングとして先発のチャンスが与えられてしかるべきだ。チェコ戦では柔軟なドリブルで突破を試み、マーカーを背負ってもワンタッチで積極的に前を向こうとしていた。

 EUROのようなビッグファイトで成功を収めるには、経験値が必要だ。フランスは14選手がロシア・ワールドカップ優勝の美酒に酔いしれている。

 ラウンド16で対戦するドイツにも、マヌエル・ノイアー、トーマス・ミュラー、トニ・クロース、マッツ・フンメルスなどワールドカップ優勝経験者がおり、ヨアヒム・レーブ監督は勝ち方を心得ている。

 場数では、イングランドが絶望的なまでに下回る。フォデン、グリーリッシュ、サカの代表歴は、3人合わせても23試合しかない。

 グループステージのようなチンタラしたフットボールでは期待薄だ。負けなければいいグループステージではなく、ラウンド16以降は勝たなくてはならない。勝利の絶対条件は、対戦相手より1点でも多く取ることだ。

 コンディションが上向きそうもないベテランではなく、オリジナリティと情熱に溢れ、なおかつボールをスピーディーかつ縦に運べる中堅・若手に切り替える方が、上位進出の確率は高くなる。

 繰り返しになるが、グループステージで2得点だ! 知名度が高くても、プレー内容が伴わない選手を外す理由となるデータは揃っている。

 スピードに欠け、プレー強度も不足しているのだから、ラウンド16以降も大きな戦力になるとは思えない。

 サウスゲイト監督は、思い切るべきだ。

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