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無失点で16強進出もイングランドの看過できない不安 動きが重く、“決定機は1回だけ”のケイン頼みは危険な兆候だ 

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粕谷秀樹

粕谷秀樹Hideki Kasuya

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posted2021/06/29 17:03

無失点で16強進出もイングランドの看過できない不安 動きが重く、“決定機は1回だけ”のケイン頼みは危険な兆候だ<Number Web> photograph by Getty Images

大会の主役候補と見られていたケインだが、ここまでは無得点。ドイツ戦ではスタメン落ちの可能性も?

ケインの決定機はわずかに1回のみ

 そして、ハリー・ケインである。

 彼はイングランドの“絶対エース” である。唯一無二のゴールゲッターでキャプテン。まさしく大黒柱だ。

 ところがグループステージを通じて迎えた決定機は、わずかに1回のみ。チェコ戦の26分、ペナルティーボックス内から右足を振り抜いた一撃が、相手のGKトマーシュ・バツリクの好守に阻まれた、あのシーンだけである。

 ケインを警戒するあまり、対戦相手の最終ラインにはギャップが生じるケースがある。大きなスペースもできている。ここにメイソン・マウントやフィル・フォデンが侵入し、いくつかのチャンスは創っている。

 ただ、ケインは動きが重く、3試合を終えて枠内シュートが前述したチェコ戦の1本と、積極性も感じられない。

 攻撃の基準点として機能し、ライン間からの仕掛けやボックス内でのフィニッシュまで、すべてを高次元でこなすと期待されていたスーパーストライカーは、精彩を欠いたままだ。

 所属するトッテナムにおける自らの去就がハッキリせず、なおかつ新監督も依然として決まっていない。アントニオ・コンテ、パウロ・フォンセカとの交渉は最終局面で決裂し、次なる候補もジェンナーロ・ガットゥーゾ、ヌーノ・エスピリト・サント、エルネスト・バルベルデ、ジュレン・ロペテギなど、一貫性を欠いている。

 不可解な人選を繰り返す上層部に対するストレスが、不振の元凶なのだろうか。

 あるいは「マンチェスター・シティがケインを獲得するために1億ポンド(約150億円)を提示した」という噂に心が揺れ、ピッチに集中できないのだろうか。

 あまりの不振に、2018年3月に痛めた右足首外側靭帯が悲鳴をあげているのでは、との情報まで飛び交いはじめている。

ラウンド16以降は若手・中堅に託すべき

 EUROは1カ月間の短期決戦だ。このままケインの調子が上がらない場合、サウスゲイト監督はドミニク・キャルバート・ルーインを前線中央に起用することも考えなくてはならない。

 ケインはロシア・ワールドカップからイングランドを支えてきた。サウスゲイト監督が信頼を寄せるのは当然だ。しかし、本調子にはほど遠いのだから、先発起用を見合わせるというプランが浮上してきても不思議ではない。

 前述したように、EUROのようなビッグゲームは主力のコンディションがチームの命運を左右する。ケインにこだわるのは危険だ。

 ラッシュフォード、スターリング、ケインが苦しむ一方で、代表選手としては今回のEUROが初の大舞台となる若手・中堅が光り輝いている。

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