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25年以内にイングランドで23のスタジアムが水没!? 気候変動に対し欧州サッカー界が講じるエコ活動の実態

posted2021/06/27 17:00

 
25年以内にイングランドで23のスタジアムが水没!? 気候変動に対し欧州サッカー界が講じるエコ活動の実態<Number Web> photograph by L’Équipe

リヨンのグルーパマ・スタジアムの駐車場に設置された太陽光発電システム。同様の取り組みが、様々なスタジアムで広がっている

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ティエリー・マルシャン

ティエリー・マルシャンThierry Marchand

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 地球温暖化・気候変動は世界的な問題であり、サッカー界も決して無縁ではない。二酸化炭素の排出をいかに減らすか、エネルギーの転換や緑化をどう進めていくか……。サッカー界も真剣に取り組むべき問題であり、すでにそれは始まっている。

『フランス・フットボール』誌3月30日発売号でティエリー・マルシャン記者がレポートするのは、そうした環境問題に対するサッカー界の取り組みの現状である。カタストロフィの兆しはすでに現れている。だが、いまだ課題は山積み。それでも今日より早い日はない。何をすべきか、何をしなければならないのかを、マルシャン記者のレポートは問いかけている。

(田村修一)

 カタストロフィの兆しがすでに現れている。気候の変調、とりわけ地球温暖化はサッカーの世界でも意識され対応を迫られている。だが、いまだ課題は山積みであり……。

 それは『ザ・ウェイブ』や『ザ・デイ・アフター』といったパニック映画のシナリオにも類する。世界が水没する。つまりスタジアムも水面下に沈む。デイビッド・ゴールドブラットは、その考えを追究していくことを自らの課題とした。ブリストル大学で社会学を専攻した彼は、博士号取得の際に環境についての研究をおこなっていた。コロナによる1年前の外出禁止期間を利用して、彼は気候学のデータとその科学的な分析を再検討し、『時計に逆らって』というタイトルのレポートに驚くべき結果を発表した。

水害こそがCL王者の真の敵

 それによれば今後四半世紀のうちに、イングランドにある23のプロクラブのスタジアムが半永久的に水没するという。そのなかにはサウサンプトンやチェルシー、ウェストハム、ノリッチといったクラブも含まれていた。ミドルズブラもまた、リバーサイド・スタジアムが完全に水に囲まれた遺跡と化してしまうという。水没は大雨により引き起こされるが、同時に海面の上昇も大きな理由である。これは決して幻想ではない。イングランドばかりに限らない、今後世界中に訪れる現実である。

「ボルドーやブレーメン、オランダ――とりわけアルクマール、ユトレヒト、フローニンゲン、ヘーレンフェーンなど海抜0m以下の諸都市で、恒常的な水没が現実となるだろう」とゴールドブラットは強調する。

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