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無失点で16強進出もイングランドの看過できない不安 動きが重く、“決定機は1回だけ”のケイン頼みは危険な兆候だ
posted2021/06/29 17:03
text by
粕谷秀樹Hideki Kasuya
photograph by
Getty Images
代表チームを束ねるのは簡単ではない。
レギュラーシーズンを終えた選手たちは心身の疲労を引きずりながら、EUROに、コパ・アメリカに、ワールドカップに臨む。
また、短期間の大会であるがゆえに戦略・戦術を落とし込めず、主力のコンディションがチームの命運を左右するケースが非常に多い。
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だからこそ今回のEURO2020では、フランスが優勝候補筆頭に推されていたのだ。2018年ロシア・ワールドカップの優勝メンバーが成熟し、代表チームとしては珍しく戦略・戦術の相互理解が十分だ。
ラファエル・バラン、キリアン・ムバッペ、アントワン・グリーズマンといった主力のコンディションも上々。しかもディディエ・デシャン監督は、チームを率いてまもなく10年目を迎える。これといった死角は見当たらなかった。しかし、それでも勝ち上がれないのがEUROの難しさだろう。ラウンド16でフランスは、PK戦の末にスイスに敗れている。
2得点のスターリングも本来の出来ではない
さて、イングランドである。
大会前はフランスに次ぐ優勝候補に挙げられていたものの、ロシア・ワールドカップから13人が入れ替わっているため、戦略・戦術の相互理解は十分ではない。
監督就任から4年7カ月を迎えたガレス・サウスゲイトは、戦術家なのかモチベーターなのか……。
また、チャンピオンズリーグやヨーロッパリーグの決勝に進出(チェルシー、マンチェスター・シティ、マンチェスター・ユナイテッド)したり、プレミアリーグの最終盤まで熾烈なトップ4争い(前述3チームにリバプール、レスター、ウェストハムなど)を繰り広げたりした選手は、少なからぬ疲労を引きずっている。
左肩、腰、右足首まで満身創痍のマーカス・ラッシュフォードに本来の切れ味はなく、グループステージでは一度も先発の機会を与えられなかった。
グループステージでイングランドが挙げた2ゴールはラヒム・スターリングによるものとはいえ、ドリブルが相手DFに引っかかる。試合から消えている時間が長すぎる。サウスゲイト監督は「何も心配していない」とかばったが、スターリング本来の出来ではない。