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遠藤航に求められる「長谷部誠のような仕事」 …五輪代表を変えた“12分間”と、相手のプレスを無効化する“戦術眼”とは?
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byGetty Images
posted2021/06/16 17:05
6月12日に行なわれたU-24日本代表vsジャマイカの試合で、遠藤航は観客を唸らせる試合ぶりを見せていた
遠藤が攻撃の起点になっていることはデータにも
ゴールの2つ前のパスを指す「セカンドアシスト」や、3つ前の「サードアシスト」という項目がある。
「セカンドアシスト」というのは一般的にはインサイドハーフのポジションの選手が多く記録する傾向があり、2015-16シーズンでは、当時ドルトムントに所属していた香川真司がリーグトップを記録している。
それぞれのデータにおける遠藤のリーグ内の順位は以下の通りだ。
「セカンドアシスト」:リーグ全体で12位タイ
「サードアシスト」:リーグ全体で3位タイ
いずれの項目でも、もちろんチームトップの成績である。
彼のデュエルに象徴されるボールを奪ってから素早く味方につなぐパスもそうだし、ゆっくりパスを回していたところから鋭い縦パスを入れて攻撃のスイッチを入れる場面もそうだ。シュツットガルトの試合を見た人は遠藤が攻撃の起点になっている感覚は受けていたはずだが、それは細かいデータにも表れていた。
大躍進のマインツを食い止めたのも遠藤
もう一つ、興味深い働きとして挙げるべきなのが、ビルドアップにおけるプレスを回避するための個人戦術の部分だった。
ビルドアップの際の遠藤の貢献度の高さを象徴するハイライトの一つは、今シーズンのブンデスリーガの後半戦で台風の目となったマインツとの試合だろう。
実は、マインツはシーズン後半戦だけの成績で言うと4位ヴォルフスブルクと勝ち点差なしの5位の成績を残していた。15試合が終了した時点で最下位だったチームは、デンマーク人のスベンソン監督の就任とともに激変したのだ。
現役時代にクロップの指導を受け、アシスタントコーチ時代にはトゥヘルをサポートし、一度マインツを離れてレッドブル・ザルツブルクのリザーブチームで研鑽をつんだのがスベンソン。そんな彼がチームに植え付けたのがプレッシングサッカーだった。
そして、そのプレッシングがマインツの大躍進の原動力であり、多くのチームがその餌食となった。
今年1月29日のマインツとの対戦では、マインツが3トップ気味にしてシュツットガルトの3バックにプレッシャーをかけてきた。試合開始早々にその狙いを見破った遠藤は、自らの判断で、DFラインまで降りてあえて4バックのような形でプレスを回避していった。
これにより相手のプレスを無効化した。多くのチームからボールを刈り取ってきたマインツの狙いはやぶられ、シュツットガルトが2-0で完勝することになった。
ロシアW杯の長谷部と同じような仕事を求められる
もちろん、あの試合以外でも遠藤の判断の質の高さや、それを任されるだけの監督からの評価の高さを感じさせる試合は多々あった。
考えてみてほしい。オリンピックやW杯のような真剣勝負の舞台では相手は日本のことを入念に研究したうえで、守ってくる。事前のスカウティングとは違う守り方をしてくることもある。結局のところ、そこで問われるのは、選手たちのピッチ上での判断である。