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遠藤航に求められる「長谷部誠のような仕事」 …五輪代表を変えた“12分間”と、相手のプレスを無効化する“戦術眼”とは?
posted2021/06/16 17:05
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph by
Getty Images
計4ゴールをあげた攻撃の選手のアピールの場としては意味があったのかもしれないが、来月のオリンピックの試合のレベルには程遠い。そう感じさせたのが6月12日に行なわれたU-24日本代表のジャマイカ戦だった。
そのかげで――。
誰が、どれだけゴールを決めるのか、攻撃を楽しみにしていたであろう4029人が陣取ったスタンドからも、大きな拍手が送られた守備のシーンがあった。
前半12分と後半14分。相手がカウンターのチャンスをつかみそうな状況で、遠藤航が中央からサイドライン間際まで出ていき、強烈なプレスをかけていったシーンだ。いずれの場面でも、そのプレスで相手にわたりかけたボールをマイボールにしてみせた。
ドイツサッカー界で最も重視される指標の一つが、デュエルを意味する『ツバイカンプフ』だ。その「勝率」ではなく、「勝利数」でブンデスリーガ全選手のなかでトップに立った遠藤らしいプレーだった。抜かれたら終わりなのがディフェンダーとすれば、その一つ前に位置するボランチの選手に求められるのはできるだけチャンスの芽を摘むこと。「数」でトップになったのは、求められることを忠実にこなしたことと無関係ではない。
勇敢な消防士のようにピッチ上を広範囲にわたって相手の反撃の狼煙を消してまわるのが遠藤の強みである。
そんな守備のプレーに大きな拍手が送られたのは、豊田スタジアムに詰めかけた誰もがわかるほどの凄みがあったからだ。
横内昭展監督の言葉からも感じる遠藤への信頼
遠藤は今回の活動が始まるにあたり、こう話していた。
「自分はオーバーエイジとして参加するので、今まで見せてきたブンデスでの1対1の強さというのは、どの相手にも出さないといけないと思っています」
ジャマイカ戦で指揮を執った横内昭展監督の言葉からも、わずか3人しか選べないオーバーエイジの1人になった遠藤へのゆるぎない信頼が感じられた。
「選手の組み合わせがこの年代のチームに来るとちょっと違うので、そこのすり合わせさえちゃんとできれば、(遠藤が)A代表でやっていること、自分のクラブでやっていることを、あまり変わらず、しかも、クオリテイーを落とさずにできると思っています」
ただ、先にあげたように、あの日のジャマイカのパフォーマンスは来月のオリンピックで対するチームのレベルとはかけ離れていた。
最大の違いは、守備の組織力と強度にある。