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“やっぱり”ジョコビッチ優勝の裏で…BIG3の玉座に「20代の第2集団」と「最強の10代トリオ」が迫っている
text by
秋山英宏Hidehiro Akiyama
photograph byHiromasa Mano
posted2021/06/15 17:02
全仏男子シングルス決勝は、ノバク・ジョコビッチが2セットダウンからの逆転で、四大大会通算19勝目を挙げた
2回戦でムゼッティに敗れた西岡良仁は、「僕が何とかしようとしても、それを超える力で1球で終わる」と相手の攻撃力に舌を巻いた。逆転勝ちのジョコビッチも「トッププレーヤーになるためのすべての資質を備えている」と驚きを隠せなかった。
勢いよく跳ねるボールで展開を作り、チャンスボールを高い打点からアタックする。このプレーは完成度も迫力も、すでに一級品だ。解説者とコーチの二足のわらじを履く鈴木貴男は、WOWOWのテニス中継と連動するインターネット配信番組でこう話した。
「フォア、バックとも力強いボールが打てる。体が出来上がり、ストロークのレベルがもっと上がれば、数年後にはトップ20、トップ10に来てもおかしくない」
シナーはツアー随一のスピン量と球速をあわせ持つバックハンドの持ち主だ。ATPの公式サイトの記事によると、バックハンドのスピン量は集計の対象になった選手で最多、球速は5位の数字だった。一般的に、スピン量が多ければ安定度は増し、ボールは高く跳ねるが、その分、球速は落ちる。スピードだけ追求すればミスのリスクが増え、弾道は変化に乏しく相手に対応されてしまう。だが、彼のバックハンドは両方の長所を兼ね備えた、重いボールを打ち出すのだ。19年の『Next Gen ATPファイナルズ』の優勝者は、現時点で次代のトップ10候補筆頭だ。
アルカラスは予選を勝ち上がり、本戦2回戦で第28シードの選手を破った。常にナダルと比較されてきたが、「僕は常に、比較されるのは好きではないと言っている。僕は自分の道を切り開いていかなければならない」と意気軒昂だ。コーチは元世界ランキング1位のフアン・カルロス・フェレーロ。「私は良いキャリアを積んだが、彼はもっといける」と秘蔵っ子に期待する。
“予想範囲内”ジョコビッチ優勝の裏で……
彼らはつまり「次の次」のグループだ。第2集団のチチパスが力強さを見せた一方で、早くも次の胎動が聞こえてきた。「終わってみれば、やはり」の結末を迎えた全仏だったが、実はレーダー網にかからない位置で、とてつもないポテンシャルを秘めた選手たちが頭をもたげた大会でもあったのだ。