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“やっぱり”ジョコビッチ優勝の裏で…BIG3の玉座に「20代の第2集団」と「最強の10代トリオ」が迫っている
text by
秋山英宏Hidehiro Akiyama
photograph byHiromasa Mano
posted2021/06/15 17:02
全仏男子シングルス決勝は、ノバク・ジョコビッチが2セットダウンからの逆転で、四大大会通算19勝目を挙げた
「その通り。私の守護天使たちがそこにいる。僕には特別の場所があるんだ。秘密は明かせないが、僕にはとてもよく効く」
結局のところ、秘密は明かされないままだった。この大会でジョコビッチが0−2から生き返るのは、ロレンツォ・ムゼッティとの4回戦に次いで2度目だ。同一大会で複数回、0−2から逆転勝利を収めた選手は、四大大会ではオープン化(1968年のプロ解禁)以降初めて(史上3人目)。そんな快挙を成し遂げた秘密を、やすやすと打ち明けるわけがない。ジョコビッチだけが知る、窮地を脱する方法がある。「特別な場所」を知る特別な選手、それがジョコビッチだ。
惜敗の22歳は「いつかトロフィーを手にできる」
敗れたチチパスには、にわかに理解しがたいジョコビッチの復調だった。
「フィジカル的にも、予測や動きにしても、すべてがフレッシュに、序盤よりずっと良くなっていた。僕のプレーが読まれていような気がした」
感じた困惑と、力関係の劇的な変化はチチパスのプレーにも影響した。坂道を転げ落ちるように失速、四大大会初タイトルが逃げていった。
それでも、初めて四大大会の決勝を経験した22歳は巻き返しを強く誓うのだ。
「私はこうしたタイトルを目指してプレーできると信じている。今日は負けてしまったが、自分のテニスを信じている。もうすぐその地点に達すると強く信じている。今日戦った選手はそれ以外の選手とは違っていた。でも、これまでと同じ姿勢を保ち、自分で自分の格を下げるようなことをしなければ、いつかトロフィーを手にできる。できない理由はないと思う」
この年齢で四大大会の決勝に進んだのは、2010年全豪のアンディ・マリー以来だ。四大大会ファイナリストとして、チチパスはダニール・メドベージェフ、アレクサンダー・ズベレフに肩を並べた。大会後の勢力図を描くなら、世界ランクを4位に上げたチチパスは、2位のメドベージェフとともに、ジョコビッチらBIG3を追う集団の先頭に立ったことになる。
BIG3、第2集団を追う「10代のスゴイ選手」とは?
勢力図と言えば、この全仏では新たな勢力が台頭した。
大会序盤戦で話題になった10代トリオだ。ジョコビッチから2セットを先取したイタリアのムゼッティと、同じイタリアの19歳ヤニク・シナー、ラファエル・ナダルの後継者と目されるスペインの18歳カルロス・アルカラスだ。トリオはそろって3回戦に駒を進め、ムゼッティとシナーは4回戦に進んだ。