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“やっぱり”ジョコビッチ優勝の裏で…BIG3の玉座に「20代の第2集団」と「最強の10代トリオ」が迫っている
posted2021/06/15 17:02
text by
秋山英宏Hidehiro Akiyama
photograph by
Hiromasa Mano
終わってみれば、やはり……。全仏男子シングルス決勝は、ノバク・ジョコビッチが2セットダウンからの逆転でステファノス・チチパスを破り、四大大会通算19勝目を挙げた。
全仏決勝でのセットカウント0−2からの逆転勝ちは、2004年にガストン・ガウディオがギレルモ・コリアを破って以来、17年ぶりだった。「19勝目」をこの目で見たいという気持ちの一方で、ファンにはチチパスが四大大会を初めて制して世代交代を進めるか、という興味もあっただろう。そんな期待や予感にうっちゃりを食わせるジョコビッチの大逆転劇だった。
勝敗を決めたのは「数分のトイレットブレーク」?
ジョコビッチは、本人が言うように0−2から「別の選手」になった。チチパスもまた、「別の選手と対戦しているような気がした」と口をそろえる。ジョコビッチが、ターニングポイントとなった第3セットの前のトイレットブレークについて話している。
「心の中にはいつも2つの声がある。ひとつは『もうできない、もう終わりだ』という声だ。声は第2セットのあと、かなり強くなった。そこで、僕は別の声を実際に口に出し、『もう無理だ』という最初の声を押さえ込むべきだと思ったんだ。『できるぞ』と言い聞かせ、自分を励ました」
コートから離れた数分間での内面の格闘を明かした上で、ジョコビッチはこう述べた。
「僕はテニス人生を通して精神力を鍛えてきた。それでもグランドスラムの大事な試合で何度も負けた。これは個人競技で、すべては自分次第だ。だからこそ精神面のトレーニングはフィジカルトレーニングと同じくらい重要なんだ。それが報われてよかったよ」
アスリートへの教訓としては100点満点だが、まだ肝心なところを話していないように思えてならない。記者が、トイレットブレークの間に「セルビアの守護聖人にでも会っていたのか?」と冗談めかして聞くと、ジョコビッチはこう答えた。