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大学長距離界のエース、駒大3年田澤廉に日本選手権で挑戦… 後輩・鈴木芽吹は「相当な負けん気」(大八木監督)の19歳
text by
加藤康博Yasuhiro Kato
photograph byYuki Suenaga
posted2021/05/02 17:02
3月の日本学生ハーフマラソンで2着に入った駒大の鈴木芽吹。4月には10000m自己ベストを叩き出すなど好調だ
「今回は芽吹に負けるかもしれません」
「試合となるとコンディション次第では分かりませんよ。今回は芽吹に負けるかもしれません」
田澤は冗談めかして笑って話してくれた。もちろん本心ではないだろう。故障明けとは言え試合に出る以上、そしてそれが日本一を争う大きな舞台であるならば尚更、結果にこだわるのが田澤であり、学生相手には負けないことを自分に課している。「この状態でも27分台にはまとめておきたい」と語る田澤に鈴木がどこまで迫れるか、田澤がどう貫禄を見せるかも気になるところだ。
だが監督としては結果以上に、得て欲しいものがある。
「実業団のトップ選手と競い合う中でしか感じられない感覚があるんです。田澤も12月の日本選手権で、日本記録(27分18秒75)を出して東京五輪代表に内定した相澤晃選手(旭化成)や2位に入った伊藤達彦選手(Honda)の後半の強さを目の当たりにし、意識が変わりました。こうした本当の意味での勝負を経験すれば、芽吹もさらに高いレベルへと目線が上がるでしょうし、そこに期待しています」(大八木監督)
「ロードが好きなようですが、トラックのセンスもあるんですよ」。そう付け加えた。ランナーとしての可能性はまだまだ開拓の余地があるということだろう。
「鈴木が田澤に勝っている点はありますか?」
最後に。「現時点で鈴木が田澤に勝っている点はありますか?」2人を指導する指揮官に聞いてみた。うーん……と時間をかけて考えた末に帰ってきた答えは
「あらゆる面で田澤が上ですが、強いてあげるとすればキツくなった場面での粘りは芽吹のほうがあるかもしれません。彼は本当に負けず嫌いですからね」
今回の日本選手権もハイペースの展開は必至。そこに監督が評価する「粘り」でどこまで食らい付けるかが最も大きな注目ポイントだ。
挑戦者として臨む初めての日本選手権。飛躍のきっかけをつかむ場としたいと師弟は口をそろえる。ここを彼のランナーとしてのターニングポイントにできるか。今回の代表選考レース、この進境著しい19歳の「粘り」にも注目したい。