「27分台を出せる力はもうありますね」

　成長は走力の向上だけでなく、レースの運びかたにも見られる。以前は先頭付近で走ろうという意欲が強すぎ、無駄な力を使う場面もあったが、最近は集団の中に入り、うまく周囲のペースを利用しながら走る術を身につけた。3月の日本学生ハーフマラソンではトップと7秒差の2位。さらに4月には10000mで先に上げた自己ベストで走った。

日本学生ハーフマラソンでは堂々の2位。1位は今年の箱根駅伝で1区区間賞を獲った法大の鎌田だった

「スタミナがつき、レースの走り方を覚えたことでハイペースの展開でも無理なく終盤までついていけるようになりました。10000mでは最後の1周で動きを切り替えて、キレのある走りができるようにもなったと思います。こうした力が勝負強さにつながります。タイム的にも27分台を出せる力はもうありますね」

　大八木監督もレースの内容が良くなったと評価する。

「まだ勝てるレベルにはありませんが」

　追いかける背中がある。駒澤大で1つ上の学年にいる田澤廉だ。前回の日本選手権では27分46秒09の日本人学生歴代4位のタイムで8位入賞を果たした紛うことなき大学長距離界のエース。今回の日本選手権では同じ組で走る。

「他大学を見ても田澤さんより強い選手はいません。田澤さんを目標にするのが強くなるために最善の方法だと思っています。まだ勝てるレベルにはありませんが、挑戦者として今回もできるだけついていくつもりです」

　同じチームにいながら、スピード練習を一緒に行うことは少なく、やったとしてもたいていは離されて終わるという。近い将来、トラックで世界の舞台を目指している田澤と今のところ「トラックは駅伝のためのスピード強化の場」と位置付ける鈴木では実力的にもまだ差があることも事実だ。

　大会の約2週間前、同じ練習をする日があった。今の田澤は箱根駅伝後に負った疲労骨折の影響もあり、本格的な練習に復帰して1カ月もたっておらず、ベストコンディションとは言えない状態にある。しかし肩を並べてスタートしたものの、やはり最後はついていけなかった。

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