炎の一筆入魂BACK NUMBER
カープの育成ドラ1は“鈴木誠也以来の逸材” 18歳二俣翔一は「激戦の捕手争い」を勝ち上れるか?
text by
前原淳Jun Maehara
photograph bySankei Shimbun
posted2021/04/28 06:01
20年のドラフト会議で、広島に育成1位で入団した二俣翔一
「1番・指名打者」でスタメン出場し18日は、スライダーに詰まりながらも左中間への適時二塁打とした。その後は当たりが止まったものの、首脳陣の評価は変わらない。指名打者制を使用するビジター試合で、「指名打者」として出場機会を得ている。
捕手としては、磐田東高2年時に再転向したばかり(中学時代まで捕手だった)で経験はまだ浅い。キャッチングやブロッキング、フットワークなど捕手技術はまだ多くの課題を残す。一方で、遠投120メートルの肩は1月の新人合同自主トレの時点で関係者の多くを驚かせていた。
打撃面も確実性は低かったが、高校通算21本塁打と飛ばす技術は高い。何より思い切り振れる力は魅力である。左足を上げる打撃フォームにも無駄がない。インパクト時のヘッドスピードが速く、フォロースイングが大きい。何よりどんな球にも振り切れる思い切りの良さは魅力だ。
攻守ともに課題はあっても、マイナスを打ち消す魅力が光っているのだ。
プロスタートは怪我でつまずくも……
ただプロのスタートは、つまずいた。春季キャンプ序盤の守備練習中に負傷し、離脱。リハビリは約2カ月に及んだ。
しかし、18歳は下を向かなかった。「いくら早く治れと思い続けても治るものではない」と割り切り、目の前のできることだけに集中した。下半身を使えない分、上半身のウエートトレーニングを強化。打撃練習再開時にはプロの速度に目をならそうと、打撃マシンの球速を上げた。「バットを振ったときに軽く感じるようになった」と、一回り大きくなった胸を張る。
今では、ロングティーやフリー打撃の飛距離は先輩選手をもしのぐ。フリー打撃では両翼100メートルの広島二軍本拠地・由宇のフェンスを軽々越え、芝生上の歩道まで運ぶ。
競争率の高い「広島捕手枠」を勝ち取るために
ただ、広島の捕手争いの激しさは一軍だけでなく、二軍も同じ。捕手技術は一軍レベルにある石原貴規を正捕手に、ベテランの白浜裕太、同じ育成選手の持丸泰輝もいる。二俣の出場機会は指名打者でのスタメンか、代打出場に限られる。
それでも、東出二軍打撃コーチは、そんなチーム内における立場も、今の二俣にとっては、プラスになると感じている。