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なぜ“いま”決断したのか? ザーゴ解任でOB相馬直樹が就任…監督交代に見る「2つの“鹿島らしさ”」とは
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byGetty Images/KASHIMA ANTLERS
posted2021/04/17 06:00
鹿島アントラーズのザーゴ監督が解任され、新監督にコーチでもあったクラブOBの相馬直樹が就任する
2020年ACLプレーオフの敗戦。ボールを持ってはいたけれど、ゲームの主導権は明らかに相手にあった。パスを繋げているのは、圧倒しているからでなく、持たされているというような展開で、相手よりも力量がありながらも「自分たちのスタイルはできているのに勝てなかった」そんな痛く、大きな敗戦で、ザーゴアントラーズは始まったことを今思い出す。
前線からのプレッシング、コンパクトな陣形で細かいパス交換でビルドアップしながら、攻めていく。ザーゴのビジョンは道半ばで終わりを迎えることになった。
「鹿島は自分のサッカーを表現し、進化させ続ける場所でしたか?」
鹿島で指揮をとっていた元監督に 以前、そう質問したことがある。
彼ははっきりと「NO」と答えた。「まずは勝利しなければならない。だから、理想をすべて追い求め続けられるわけではないよね」と。
たとえば、「前からアグレッシブな守備で戦う」と指揮官が掲げ、開幕を迎えたシーズンがあった。けれど、開幕戦でそれがうまく行かず敗れると、「前からではなく、少し引いてブロックを作る選択肢も取り入れなくちゃいけない」という微調整がチーム内、選手間でなされ、結果、勝ちを積み重ねたこともある。
「(自分たちから)アクションを起こせるようにしたい」
「ゲームの主導権を握るというのは、相馬監督にとってどういうことですか? それはボールポゼッションと関係ありましたか?」
オンライン会見に臨んだ相馬新監督に、観念的でもあり、簡単に答えられるものではないと想像しながらも、どうしても質問してみたかったのだ。
「まあ、難しいですよね、正直。ボールを持っていても主導権がないときがあるし。ただ自分たちがアグレッシブにできているのかが大事かなと。ボールを持っているのか、もたらされているのか、そういうことになるのかなと単純に思います。全体的にいえば、『勝たなくちゃいけない』『勝ちに近づかないといけない』ということ。見ているお客さん、応援してくれる人たちがそう感じられるか。言葉が難しいですが、逃げるというのではなく、いろんな意味でアクションを起こせるようにしたい。もちろんそれは理想だと思います。実際はリアクションが必要なときもあると思いますけど」
ここで思ったのは、「逃げる」というのは、消極的な姿勢を指すのかもしれない、ということだ。つまり、消極的な姿勢や戦い方を否定しているのだろう。一般的に「アグレッシブ」、「アクションを起こす」ことが積極的で、「リアクションすること」は消極的だと見られる。ただ、“積極的にリアクションを選ぶ”ことも、勝利のためには必要ではないだろうか。
鹿島の強さは「派手というよりは、“地味に”強い」
今回のオンライン会見でも「鹿島らしさ」について、何度か質問が飛んだ。会見冒頭に監督就任にあたっての気持ちを聞かれた相馬監督が、クビを何度もひねり、言葉を選びながらゆっくりと答えたのが印象的だった。でも、だからこそ、彼のこの任に対する覚悟が伝わってきた。