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なぜ“いま”決断したのか? ザーゴ解任でOB相馬直樹が就任…監督交代に見る「2つの“鹿島らしさ”」とは 

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寺野典子

寺野典子Noriko Terano

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photograph byGetty Images/KASHIMA ANTLERS

posted2021/04/17 06:00

なぜ“いま”決断したのか? ザーゴ解任でOB相馬直樹が就任…監督交代に見る「2つの“鹿島らしさ”」とは<Number Web> photograph by Getty Images/KASHIMA ANTLERS

鹿島アントラーズのザーゴ監督が解任され、新監督にコーチでもあったクラブOBの相馬直樹が就任する

 そうやって、「生き物」であるチームの機微を観察し、そこで行われていること、その場の空気をくみ取っているのだろう。そのうえで、常に監督との意見交換を継続して行ってきた(もちろんこれはザーゴ監督に限らない)。勝負の場における勝敗をはじめとしたデータはもちろん重要だが、今回の解任判断はそれだけが理由ではないのだろうと思えるのは、そんな練習場での光景を思い出すからだ。だからこそ、鈴木FDは「練習の強度が高い」と昨季の勝てなかった時期もザーゴ監督の手腕にチームを託す決断をしている。

 そんななか、会見で「球際で勝負できず、内容もよくなかったですし、『これではな』という想いを強くした試合」と鈴木FDが振り返ったのは、4月3日の第7節浦和戦(1-2)だった。続く2試合を思い出してみても、試合の結果だけでなく、チームの空気に「改善の兆し」が感じられないと判断しての監督交代だったのだろうと思う。

 4月7日の第8節柏戦(2-1)も勝利はしたものの、内容は惨憺たるものであった。得点後の失点や縦パスでのボールロストも頻発した。選手たちの背中から感じたのは、余裕の無さや慌てた様子だった。同じ勝てない状況であった昨季とは、また別の風景だ。新しいスタイルを消化し、表現するために多少の息苦しさを抱えつつも、進化することへの意気込みや前向きさが漂っていたが、今季のプレーにはそれが希薄だったように思っていた。

 クラブが監督解任を決めたという札幌戦も、「ワイドから攻撃を仕掛けてくる相手への対策として、ボランチにDFラインへ入るよう指示した」とザーゴは語っていたが、結果的に見れば、それが災いしたのか、DFラインが下がり、押し込まれ、PKを与えてしまい、2-2と追いつかれた。

「誰が見てもPKではなかった。非常に残念だ」と指揮官が繰り返したのも印象的だった。

鹿島を背負う「監督」という仕事の難しさ

 昨年、「ACL出場を逃し泣き崩れる選手たち…『基礎を残して新築』の2020年鹿島に“足りなかったもの”は?」で、「過去の鹿島は常に選手ファーストのチームだったと思う。指揮官は、型を整えたり、選手たちのモチベーションを維持するのに長けたタイプが多かった。もちろん日々、選手のスキルを磨く場も指揮官が用意していたものの、ゲーム上の機微を左右するのは選手自身だった」と書いた。「(今は)『勝負強さ』を表現する選手が減り、戦術ファーストというチーム作りが急務だと考えて『新築』を決行したに違いない」と。

 これは過去の鹿島が指揮官を軽んじてきたということではない。いくら選手ファーストといっても、指揮官の存在は非常に大きいし、選手ファーストだからこそ、監督の役割は多岐にわたるのかもしれない。

「試合の主導権を握るサッカーを」

 鈴木FDはザーゴ監督就任時にそんなふうに話していた。

 サッカーは相手のあるスポーツだから、他者との差が歴然としていれば、自然とこちらがゲームの主導権は握れる。それはボールのポゼッション率として現れることもあるが、目には見えないものも少なくない。

【次ページ】 「(自分たちから)アクションを起こせるようにしたい」

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