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【箱根駅伝スカウト事情】“名門”ではない大学はどうやってトップランナーを? 「国体3000m」と“目には見えない縁”とは
posted2021/03/31 11:04
text by
杉園昌之Masayuki Sugizono
photograph by
Nanae Suzuki
桜が散り始めると、晴れやかな入学式を迎える。
夢と希望に胸を膨らませているのは、新入生だけではない。3年連続で箱根駅伝のシード権を獲得した國學院大の前田康弘監督は、心を躍らせていた。
「いまだかつてないレベルの選手が来てくれました。うれしさをこらえ切れず、昨年の時点でつい話していましたけどね」
この春、福岡県の自由ケ丘高校から入学してきた山本歩夢の5000m自己ベストは13分48秒89。高校2年時に1500mでインターハイ決勝に進むなど、高校長距離界ではトップクラスのスピードを誇った。國學院大にとっては、初めての13分台ランナーだ。そのほかにも、14分03秒41のタイムを持つ平林清澄(美方高・福井)など、今季は過去最高と言っていいほどのタレントが加入した。
丁寧に選手を育成し、着実にチーム実績を積み上げてきた努力の賜物である。2019年の出雲駅伝で初優勝、20年1月の箱根駅伝で総合3位。非エリート軍団の快挙は、新入生の勧誘活動にも大きな影響を与えている。
「ただ勝っただけでなく、漫画のストーリーのように強い大学を倒したインパクトは大きかったと思います。高校生たちの心にも響いたみたいです。いいイメージを持ってもらっているという感触はあります。箱根駅伝の勢力図を変えていくには、スカウトでも勝たないといけません。チームづくりの根っこですから」
スカウトは一発勝負のレースとは違い、長丁場である。必死に探して、根気強く追いかけ、入学まで待つこと2年半――箱根駅伝の戦いは大手町のスタートラインに立つ、ずっと前から始まっている。