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【センバツ】人口5000人“離島”の希望・大崎高校、初戦で散る 監督は「島への“恩返し”が2割に減ってしまった」
posted2021/03/22 18:20
text by
中村計Kei Nakamura
photograph by
KYODO
まるで、マスク内に「熱気」がこもるのを解放するかのように右手でマスクをむしりとった。
2点を追う7回裏、エンドランが見事に決まり、1アウト一、二塁とチャンスが広がった瞬間だった。
三塁側ベンチに陣取っていた大崎の監督、清水央彦が振り返る。
「冴えない展開だったので、このままだとズルズル行く。今度出たら、エンドランを出そうと思っていた」
2アウト後、清水の気合いに乗っかるように、7番・坂本安司がセンター前ヒットを放ち、ようやく1点を返した。
しかし、この日、長崎の離島・大島からやってきた大崎の見せ場はこれだけだった。
「ヘッドスライディングとか、いらない」
清水は煮えたつ思いを静めるように、ことさら淡々と語った。
「負けるときはこんなもんです。自分たちの弱いところが出た」
弱さ。2回表、エラーをきっかけにピンチを招き、2失点。その後は、2度、走塁ミスでチャンスを潰した。
清水は、清峰をコーチおよび部長として4回、佐世保実業を監督として2回、甲子園に導いた名指導者だ。だが、そんな清水が就任し、まだ3年弱の若いチームでもある。
「これぐらいが実力かな、という気がします。1年生(=新2年生)がミスをしているんで。その辺りは、半分、しゃあないかなと思う」
2番・ライトの乙内翔太は、初めての大舞台に立った心境をこう表現した。
「浮いてる気分だった」
一見、熱がこもっているように見えたプレーも、いつもと違うことの裏返しでしかなかった。初回、先頭の池田晃弥はセカンドゴロでいきなりヘッドスライディングを見せた。
「チームを波に乗せると言うか、流れを持ってこようとした」
池田は続く第2打席、サードのエラーで出塁したときも、一塁へボールが送球されていないにもかかわらず、頭から突っ込んだ。
まっすぐな性格の清水は、安易に選手を慰めたりはしない。