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Jリーグ審判が使う「シュッと消える」スプレー秘話 開発した鹿島&浦和の熱烈サポーターがこだわった“芝への影響”とは

posted2021/03/18 11:01

 
Jリーグ審判が使う「シュッと消える」スプレー秘話 開発した鹿島&浦和の熱烈サポーターがこだわった“芝への影響”とは<Number Web> photograph by J.LEAGUE

Jリーグで使用される“国産”のバニシングスプレー。その開発には人知れぬ苦労があった

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熊崎敬

熊崎敬Takashi Kumazaki

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J.LEAGUE

 29年目のシーズンを迎えたJリーグは、プレーヤーの技術、戦術だけではなく、道具の進化によっても支えられてきた。

 2015年に導入された「バニシングスプレー」も、そのひとつ。

 試合中、審判が腰につけているのがバニシングスプレー。フリーキックの際、泡によって壁やボールの位置を一時的にマーキングするために使用される。

 バニシングという言葉は「消える」を意味するが、このスプレーが実際に試合から消したものがある。壁の境界をめぐる“紛争”だ。

 フリーキックのとき、ファウルを犯したチームはボールが蹴られる地点から9.15m離れなければならない。だが守備側の選手が自分たちに有利になるよう、どさくさに紛れて前に壁をつくることがあり、審判や相手選手ともめる。

 紛争がヒートアップするとイエローカードが出たりして、ゲームの再開は遅れていく。いいことはひとつもない。

 この紛争が、スプレーの導入とともに激減した。シュッと出て、シュッと消えるバニシングスプレーは、さりげなくゲームの円滑な進行に寄与しているのだ。

熱烈な鹿島&浦和サポ「ぼくらもやりたいねえ」

 現在、Jリーグで使われているスプレーは、実は15年に導入されたものではない。

 Jリーグは当初、14年ブラジルW杯で使用された海外製のスプレー『9・15 FAIR PLAY LIMIT』を採用した。だが、1シーズンももたずに、10月で使用中止に。液もれなど製品の不具合が確認されたからだ。

 1シーズンの空白期間を経て、スプレーは17年シーズンに復活するが、このときから使われているのが『FKマジックライン』。スプレー商品を中心とした化粧品・医薬部外品の企画、製造、販売を手がける国内メーカー、株式会社クイックレスポンスが開発したものだ。このFKマジックラインが“Jリーグデビュー”を飾るまでには、紆余曲折の物語があった。

 Jリーグでのバニシングスプレー元年となった15年、クイックレスポンス社の悉知秀行と金丸竹治はいち早くこの商品に目をつけ、「ぼくらもやりたいねえ」と言い出した。というのも悉知は鹿島アントラーズの、金丸は浦和レッズの熱烈なサポーターだからだ。「消える魔法のスプレー」と呼ばれて話題になったスプレーをスタジアムで目の当たりにして、「これは黙ってられない」と職業魂に火がついた。

 さっそく会社の代表に掛け合うと、「それならチャレンジしようよ」。あっさりゴーサインが出た。だが、ここから鹿島と浦和、呉越同舟の苦難の旅が始まる。

【次ページ】 いきなりぶつかった特許問題「お先真っ暗」

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