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Jリーグ「ゼロ円移籍」問題 なぜ“外資系”代理人は「レンタル移籍」を推すのか?【齊藤未月(湘南→ロシア)移籍のウラ側】
posted2021/03/17 17:02
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph by
SHONAN BELLMARE
Jリーグにとって、移籍金ゼロで海外クラブに引き抜かれる「ゼロ円移籍」は大きな悩みのひとつだ。
戦力ダウンになるだけでなく、次世代への育成資金が失われてしまう。それでも有効な解決策が見つからず、「ゼロ円移籍」問題は放置されてきた。
だが、この難問に一石を投じる代理人事務所が現れた。
イギリス・ロンドンに本社を置く『CAA Base』(以下、『Base』)だ。
送り出すJクラブに利益をもたらす
「僕たちは常にクラブにも利益をもたらす移籍を考えています」
同社の日本担当代理人・富永雄輔(38歳)は誇らしげに宣言した。
「ロンドンの本社からJリーグでクラブとの信頼関係が崩れるような移籍をすると、長い目で見るとプラスにならないから気をつけるように言われています。
新たに選手と代理人契約をしようとするときに、クラブから疎ましがられるかもしれない。外国人選手を売り込んでも取ってもらえないかもしれない。だから、選手だけでなく、送り出すクラブにも利益があるよう常に気をつけています」
この言葉通り、『Base』はJリーグのクラブに利益を残す仕組みを提示し続けている。
たとえば、金額は非公表だが、シュミット・ダニエルの仙台からシント・トロイデンへの移籍では移籍金を生じさせた。
「僕たちは代理人の会社として、一緒にJリーグを育てなければいけないと考えています。世界に通用するマーケットにしましょうと常々言っている。
『Base』が本格的に日本へ進出したのと、『DAZN』がJリーグの放映権を買ったのはほぼ同じタイミング。外資が日本を下に見て、利益を根こそぎ持っていくように思われてはいけない。サッカーの歴史が長い国から来た会社として、日本サッカーを発展させなければなりません」
「ゼロ円移籍」ではなく「買取オプション付レンタル移籍」
前の記事で書いたように、『Base』はグローバル企業としてコンプライアンスやガバナンスを大事にしており、「節度を持った選手との付き合い」や「強化担当者への過剰な接待をしない」といったルールに基づき行動をしている。報酬に関してもグローバルスタンダードを適用し、基本的に選手から代理人に手数料が支払われることはない。