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世界中が悩む点取り屋問題…“クローゼ後”のドイツが取り組むFW育成プロジェクトとは
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byTakuya Sugiyama/JMPA
posted2021/03/18 17:00
圧倒的な決定力を誇るレバンドフスキ。彼が語った「点取り屋とエゴイスティックさ」の考察は興味深い
レバンドフスキもエゴイストぶりを批判されていた
もちろん、覚悟を持てば優れた選手になれるわけではないし、エゴイストになればいいストライカーとなれるわけでもない。それでも、「ゴールを決めるのは俺の仕事」という気持ちがなければ、屈強な相手からゴールを量産することは難しいだろう。
昨年、世界最優秀選手に選出されたバイエルンのFWロベルト・レバンドフスキはかつて、そのエゴイストぶりを批判された時期もあった。
ドルトムント、バイエルン、スイス代表で指揮したオットマール・ヒッツフェルト監督に「彼はエゴイスト。バイエルンに相応しくない」と批判されたこともある。いまでこそアシストも多く、守備でも精力的に汗をかき、バイエルンのハンジ・フリック監督から「この惑星で最も完成された選手」と最大級の評価を受けているが、自分がゴールを奪うことへの熱い思いは変わっていない。
「エゴイスティックさにはポジティブな面も」
昨年末のボルフスブルク戦でブンデスリーガ通算250得点を達成した直後に、テレビインタビューで次のように答えていた。
「もちろん僕はチームのためにプレーしようとしている。それでもゴールへの感覚を保ち続けるためには、エゴイストであり続けることも必要なんだよ。エゴイスティックさにはポジティブな面もあるんだ」
サッカーはチームスポーツだから、みんなが好き勝手にプレーしたらどうにもならない。最低限「お互いこれはやらなきゃだめだぞ」という線引きをする必要はある。そのうえで「チームとして機能させるためにこんな仕事をしてほしい」という指導者サイドの思いと、「それをしたら自分の良さがなくなってしまう!」という選手サイドの思いを、ある程度以上オープンにぶつけ合う必要がある。
ディスカッションして、改善点を見つけ出し、育成年代からガツガツやっていけたら、ハイブリッドな選手と指導者がもっともっと育まれてくるのではないだろうか。
ドイツではドルトムントの16歳FWユスファ・ムココが、U-21代表へ招集された。彼を筆頭に、今後ブレイクする選手が出てくるかもしれない。5年後、ドイツ代表でストライカーを務めるのは誰なのか。
育成年代から取り組まれている『FWプロジェクト』が今後どのような選手を生み出し、チームにどのような影響を及ぼすのか、楽しみだ。