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世界中が悩む点取り屋問題…“クローゼ後”のドイツが取り組むFW育成プロジェクトとは
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byTakuya Sugiyama/JMPA
posted2021/03/18 17:00
圧倒的な決定力を誇るレバンドフスキ。彼が語った「点取り屋とエゴイスティックさ」の考察は興味深い
FWコーチがいないクラブもあるわけだから
「自分たちが行っていることを、所属クラブにもしっかりと伝えている。いまでは多くのブンデスリーガ育成アカデミーにFWコーチがいて、週1、2回それぞれの成長に合わせて特別トレーニングが準備されている。ただ、FWコーチがいないクラブもあるわけだから、そうしたところには自分たちの取り組みの内容と経験を伝えるようにしているんだ」
一方で、サッカーは総合力が求められるスポーツでもある。筆者自身、A級ライセンス講習会や国際コーチ会議で指導者仲間と頻繁にディスカッションしているのだが、誰もが「サッカーは総合力が求められるスポーツだ。だからこそトレーニングでも総合的な取り組みが必要になるし、いかに複合的に組み合わせるのか、どういう視点から考えるか」という点に言及している。
「最近は戦術的な総合力に価値を見出す指導者が多い」
個別化アプローチと総合的アプローチ。この2つをいかにバランスを取って取り組むのか。そこを見極めていかなければならない。
「僕の経験から言うと、最近は戦術的な総合力に価値を見出す指導者が多くなっていると感じる。ただ、いつ、どこで、どのように動かなければならないかというトレーニングが重要視されるのはわかるが、成長過程にいる選手が身体的、あるいは技術的に追いついていないにもかかわらず、そうした戦術的な要求を満たすためのトレーニングだけで進めていくと、問題が出てきてしまうだろう。
だからこそ、選手個々に合った形でトレーニングを提供することが重要になると思う。総合的な戦術力を身につけることを疎かにしてはいけないが、選手を成長させることに主眼を置くことを忘れてはいけない。個々の能力を伸ばし、それぞれのポジションに必要なプレーを知り、それを成熟させていく。そうやってサッカー選手としての力を身につけていけば、試合の中で状況を正しく認知し、求められる戦術的要求に対応できるようになると思う」
現代サッカーでは総合力が求められる。ただ、アベレージのレベルを高く上げていく作業のほかに、「これが俺の武器だ!」と思えるものを持てるかどうかは、やはり重要になる。特にゴールを決めること、ゴールへの道を作り出す仕事が求められるFWには、そのための「確固たる決意」がなければならない。