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<現役最終戦に秘めた思い(12)>廣山望「終わりではなく、次なる旅の始まり」
posted2021/03/17 08:00
text by
鈴木忠平Tadahira Suzuki
photograph by
Getty Images
「サッカーは本来、ワールドワイドなツール」。そう語る流浪のフットボーラーは、海外5カ国目、アメリカの地で現役最後のピッチに立っていた。
2012.8.25
USLプレイオフ 1回戦
成績
リッチモンド・キッカーズ 2-3 ウィルミントン・ハンマーヘッズ(前半1-0、後半1-3)
◇
記録としてはアメリカ東部時間8月25日の夜、廣山望は現役生活にピリオドを打ったことになる。バージニア州リッチモンドのフィールドに立ち、ユナイテッドサッカーリーグ(USL)チャンピオンシップのプレイオフ1回戦に74分から途中出場した。それが最後である。
だが、廣山には何かを終えたという感傷はなく、ただ、また次の旅が始まるのだと考えていただけであった。
この年の初め、日本サッカー協会から、現役を終えたらすぐに指導者としてスペインへ留学しないかと打診を受け、廣山自身、それを新たな目的地と定めていたのだ。
《もうピッチの上でサッカーをしなくなることを、区切りとは感じていませんでした。僕はずっとサッカーを通して新しい経験をしたいと思ってやってきたので、指導者としての道も、これまでプレーしてきた延長線上にあった。むしろ、これまでより向上の余地が山ほどあるステージが目の前にあるという感覚でした》
振り返ってみれば、廣山にとってのサッカーとは世界を歩くためのパスポートであり、発見のためのツールという側面があったかもしれない。