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大迫勇也もプレーした古豪の美学とは? 経営悪化で4部降格も、失わなかった最強の武器“育成” 

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中野吉之伴

中野吉之伴Kichinosuke Nakano

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posted2021/03/10 11:00

大迫勇也もプレーした古豪の美学とは? 経営悪化で4部降格も、失わなかった最強の武器“育成”<Number Web> photograph by Getty Images

1860ミュンヘンのようなクラブがあるからこそ、欧州サッカー界は裾野が広いともいえるだろう

 クラブの確かなアイデンティティの中で育まれた選手が、プロデビューを果たし、その選手が後進の選手たちにそのアイデンティティの大切さを伝えていく。だからこそ、その言葉はダイレクトに響くだろう。

サッカーだけではなく、新しいチャレンジを

 また、子供たちに新しい体験をしてもらう企画も数多く行われているという。サッカークラブだからといってサッカーだけやるわけではなく、新しいチャレンジをたくさんする。そこには、新しい世界に触れることの楽しさや大切さを感じ取ってもらう狙いがある。

「去年は、インクルシブスポーツチーム(障害スポーツ)を招待して、うちの選手たちと一緒にトレーニングをしました。U11の選手たちが自らトレーニングをプランしました。そうした活動もすごく大事だし、素敵なことだと思っています」(バルス)

 サッカー選手としての成長につながる実践的アプローチもある。料理教室がその1つだ。選手だけでなく両親にも伝えることが必要なので、選手と両親が一緒に料理を作りながら、スポーツ選手にとってどんな料理が大切なのか、成長に不可欠なのはどんな料理なのか、を学んでいる。

「すごく大事な分野だと思っていますし、ここ最近は今まで以上に重要視されています。メディアからの情報もあって、選手も両親もプロに必要な要素は耳にしていますが、うちから育ったノイハウスがどんな努力をしていたのか具体的な話をしたら、みんなやっぱり真面目に聞きます(笑)」(バルス)

 クラブとして戦う道は、一番上を目指すことだけではない。地域に密着し、互いに支え合い、自分たちらしさを丁寧に築き、人を大切にしているクラブもある。日本にも独自の価値観を持ったクラブが増えていけば、きっと、もっともっと素敵なスポーツのある社会となるのではないだろうか。

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