プレミアリーグの時間BACK NUMBER
まるで“世界一高価な頃のベイル”… 引退説や「賞味期限切れで返品必至」の酷評を吹き飛ばす復活ぶり
posted2021/03/08 17:01
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph by
Getty Images
イングランドでは、昨年3月以来3度目のロックダウンがようやく解除に向かうことが決まった。3月後半からアウトドアで友人らと会うことが許され、4月中にはレストランやパブも営業を再開。5月23日の今季プレミアリーグ最終節までには、数千人単位を上限に有観客試合の開催も解禁となるかもしれない。
少しずつだが、日付や曜日の感覚が麻痺した同じような毎日の繰り返しから解放されるという気持ちになっている。
そんな中、一足早く憂鬱なマンネリ感から解放されたのはトッテナムのファンだろう。
英国政府がロックダウン解除プランを発表した2月22日の週、トッテナムは2試合続けて爽快な4-0勝利を記録。しかも、昨年9月にレンタル移籍でレアル・マドリーから帰って来たギャレス・ベイルが、計3ゴール1アシストと活躍した。そして7日の第27節クリスタル・パレス戦でも2ゴール(チームは4-1で大勝)と、まさに絶好調である。
12月にリーグ首位に立って以降、急失速
ヨーロッパリーグ(EL) でベスト16入りを決めた24日のヴォルフスベルク戦も、プレミアリーグで3試合ぶりに白星をあげた28日のバーンリー戦ともに格下相手ではあったが、チームとファンにとっては重大な意義を持つ連勝だった。
トッテナムが、ホームでのアーセナルとの北ロンドンダービーに勝ち(2-0)、リーグ首位に立ったのは昨年12月上旬のこと。だがそれは、はるか昔のことに感じられる。その後は、ロックダウン解除プラン発表前日のウェストハム戦(1-2)を含むリーグ戦10試合で、計27ポイントを落とした。ボール支配率は平均49.2%。枠内シュート数は平均3.5本という、ファンにとっては内容も結果も冴えない試合の繰り返しだった。
報道のトーンも暗かった。ウェストハム戦の前、首位に浮上していたマンチェスター・シティに完敗(0-3)すると、トッテナムを率いるジョゼ・モウリーニョは一昨年11月にマウリシオ・ポチェッティーノ(現パリSG監督)から引き継いだチームを「退化」させたと批判された。
「期待外れ」の代表格だったベイルだが
強豪対決で終盤の20分弱しか使われなかったベイルは、「期待外れ」の代表格のように扱われた。『デイリー・テレグラフ』紙では、奮起など望み薄だとでも言うかのように、やはり指揮官の信頼が薄いと思われていたデル・アリとベンチで談笑するベイルの写真が、マッチレポートに添えられていた。
そんなベイルが、憂鬱な日々を過ごしていたファンに笑顔をもたらした。