欧州サッカーPRESSBACK NUMBER
大迫勇也もプレーした古豪の美学とは? 経営悪化で4部降格も、失わなかった最強の武器“育成”
posted2021/03/10 11:00
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph by
Getty Images
現在ブレーメンでプレーする日本代表FW大迫勇也が、ドイツで最初に所属したクラブをご存じだろうか?
答えは、ミュンヘンに本拠地を構える1860ミュンヘンだ。1966年にブンデスリーガ優勝を遂げた古豪で、1990年イタリアW杯優勝メンバーのトーマス・ヘスラーがプレーしていたクラブとしても知られている。
大迫が加入した2013-14シーズン当時は、2部降格10年目というありがたくはない記念イヤーだったこともあり、1部昇格を目標に奮闘していた。前半戦を終えた時点では3位カイザースラウテルンと勝ち点1差の6位。冬の移籍市場で大迫を補強し、一気に後半戦を駆け上りたかったが、取りこぼしが続いて最終的に7位で終わってしまった。
大迫は、その後1部ケルンへ移籍したわけだが、1860ミュンヘンはそこからどのような道を歩んできたのだろうか。
経営悪化で2016年には4部まで降格
1部復帰はおろか逆風ばかりの日々が続いた。昇格なんて口にできないほど経営悪化が進み、2016年にはプロクラブライセンスが交付されなかったため、2部からアマチュアである4部への強制降格を余儀なくされてしまった。
名門、古豪というプライドは吹き飛んだ。ただし、それだけのショックを受けたことで、クラブにとって大事なものを見つめなおす大事な契機になったようだ。
自分たちのクラブは何のためにある?
自分たちらしさって何だったんだ?
自前の選手はどこに行った?
1860ミュンヘンの原点であり、最強の武器でもあるのは、ドイツ全土でトップレベルと評価される育成力にほかならない。