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開幕2連敗…“問題は攻撃” 遠藤保仁がチームに要求してきた「動いて動かすスタイル」はいつ確立するのか?
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byJ.LEAGUE
posted2021/03/08 17:00
開幕戦の琉球戦は、開始1分に失点した後、20本ものシュートを放ったが、1点も取れずに敗れた
「磐田はボールをつなぐ攻撃的なサッカーで攻めて勝つスタイル。そのためには自分が攻撃のスイッチにならないと。いろんな選手の特徴を考えてやっていければいい」
遠藤は、今シーズンにおける自らの仕事について、そう語っている。
遠藤は昨年、磐田に移籍してきた時、磐田はフリーな選手にしかパスを出さない安パイなプレーが多く、それでは相手を崩せないと感じていた。そのため、「相手がいても俺に出せ」と要求し、「出して、動く」という基本的な動きをチームメイトに求め続けた。シーズンの終盤にはかなりよくなったというが、それを今年も継続し、さらに徹底していきたいと考えていた。
この日の磐田の攻撃は、どうだっただろうか。
町田はそれほど脅威に感じていなかったようだ。テクニカルエリアからポポヴィッチ監督の声が聞こえてきたが、球際など個々の選手を覚醒させる言葉が多く、磐田の攻撃に対しての守備の指示はサイドのクロスに対して「中を締めろ」というだけだった。それは裏を返せば相手の攻撃はさほど脅威ではなく、ボックス内だけケアしていればやられない自信を持っていたということだ。
自分たちが動き出して、相手を動かす
サイドから脅威を与えられないのであれば、中を使っての打開が必要になるが、そこはどうだったのか。
「ボランチの遠藤と山本康裕をうまく使えたらと思っていたけど、そこを使うのが少なかった」
試合後、鈴木監督はそう語っていたが、この試合は遠藤や山本を起点にしてボールを回しながら攻めるスタイルがあまり見えなかった。
遠藤がいいポジションでボールを持てば良質のパスが出て、チャンスになるのは磐田の選手は理解しているはずだ。実際、前半終了間際、GKとDFの間のスペースに飛び込んできた松本に合わせた浮き球のパスは、遠藤にしか出せない相手の意表を突く質の高いパスだった。
本来であれば、そういうシーンをもっと作りたかったはずだ。
そのため、遠藤は前や中に急ぎ過ぎる攻撃陣に対して、ボールを持った時はあえてゆっくりと時間を作ってリズムを変え、余裕をもって攻めようというメッセージを発していた。だが、それでも攻め急ぐケースが多く、またボールを持っても周囲が連動せず、相手の素早い寄せに動きが止まって、バックパスが増えた。藤川虎太朗が入り、積極的に仕掛けるプレーが出てきてから全体に動きが出てきたのは次に繋がるが、「自分たちが動き出して、相手を動かさないと、点は取れない」と鈴木監督が語ったように、遠藤が昨年から言い続けてきたことがチームとして出来ていない。