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J監督は“浪人期間”に何する? アトレティコ視察&娘と見た『約束のネバーランド』《J2山口・渡邉晋の場合》
posted2021/03/09 11:01
text by
石倉利英Toshihide Ishikura
photograph by
J.LEAGUE
2021年のJリーグ全57クラブのうち、約3割にあたる17クラブで監督が交代した。前のクラブを退任後、すぐに次のクラブで指揮を執る監督がいる一方で、いったん指導の現場から離れた人もいる。
契約が終われば無職となる厳しさはJリーグに限らず、いまや一般の社会人にとっても無縁ではない。とはいえ、そんな時代に問われるのは、契約が終わった後の「浪人」期間中に、何をするか。次を見据えて行動し、吸収し、自らをバージョンアップさせた者こそが新しい道を切り開いていくのも、すべての世界に共通していることだろう。
2月28日、スコアレスドローに終わった松本山雅とのJ2リーグ開幕戦で約1年ぶりに指揮を執った、レノファ山口の渡邉晋監督は言った。
「久しぶりの公式戦でしたが、思っていたよりも緊張感はなく、落ち着いていたと思います。理由は何かと考えてみると、いろいろな経験をさせてもらった時間があったのは、間違いなく私の財産。それが今日という日に生かされたのかもしれません」
退任後すぐにスペインへ
2014年途中から指揮を執ったベガルタ仙台の監督を退任することが発表されたのは、19年12月9日。それから1年余り、「いろいろな経験」を積んできた。
数日後にはスペインへ飛び、アトレティコ・マドリーの練習を視察した。海外クラブの視察は毎年オフの恒例行事だが、次の仕事が決まっていない状況で向かうのは初めて。すぐにでも指導者を続けたいと考えており、オファーが来たときに海外にいるとチャンスを逃す可能性があったものの、思い切ってクリスマス明けまで約2週間、トップチームやアカデミーの練習を視察した。
それまでは仙台の監督として視察していたため、たとえば練習メニューでも、仙台で採り入れることができるのか、難しいのか、自然とフィルターをかけて見ていた。だが今回は「いろいろなものがストレートに、どんどん自分の中に入ってくる感覚があった」と振り返る。
年が明け、当面は現場を離れることが決まると、次の仕事に備えて勉強の日々が始まった。1月末には宮崎へ出向き、横浜F・マリノスなどの練習を視察。2月中旬にJリーグの公式戦が始まると、ルヴァンカップとJ1の開幕戦全試合を映像で見て、各クラブの戦術的な特徴、自分なりの采配などを専用のノートに書き留めた。