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遠藤航が闘将ドゥンガに肩を並べた? シュツットガルトで絶大な信頼と“約10億円の市場価値”を手にするまで
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byGetty Images
posted2021/03/06 17:02
シュツットガルトの遠藤航は2月27日のシャルケ戦で2ゴール2アシスト。最も注目される選手の一人となった
「遠藤は真のリーダーなんだ」
シュツットガルトは平均年齢が23.9歳と、今季のブンデスリーガのなかで最も若いチームだ。28歳の遠藤にキャプテンマークをたくした理由について、マタラッツォ監督はこう語っている。
「遠藤はすぐれた仕事とともに、チームを引っ張ってくれる。彼は真のリーダーなんだ」
確かに、遠藤の344回のツバイカンプフ(いわゆるデュエルのドイツ語のこと)の勝利数がリーグ全体でトップになっていることは日本でもすっかり知られるようになった。
ただ、それはツバイカンプフと聞いてイメージする、身体の強さに頼ったものではない、という事実を見落としてはいけない。
遠藤の強さの秘訣の一つは、彼が頭を使って守っているということだ。
例えば、ヘディングの競り合い。対峙する相手選手よりも先にボールの落下地点を読む。そのうえで、相手よりも早いタイミングでジャンプする。たいていの相手は身長178cmの遠藤より大柄だから、相手が飛んでくるタイミングで、相手の肩に腕をかける。これにより、自らは二段ジャンプをしたような形になる一方で、相手のジャンプを抑えることができる。この2つの効果で彼は上手に対応して見せる。
走り回り、ピンチの芽をことごとく摘んでいく
もう一つが、ピッチ上を走り回っているということだ。
デュエルの「勝利数」以外にも、実は以下の2つの項目でもリーグトップクラスのデータを残している。
・走行距離 254.6キロ(リーグ3位)
・デュエル「に挑んだ回数」 637回(リーグ3位)
これが何を意味するのかわかるだろう。
遠藤はピッチ上を広範囲に走り回り、ピンチの芽をことごとく摘んでいっているのだ。
もし、最終ラインにいるディフェンダーであれば、デュエルの勝利回数よりも、絶対にやられないという高い勝率が求められる。
だが、その一つ前に位置するボランチの選手であれば、まず求められるのは勝率よりも回数だ。チームのために、どれだけ汗を流せるか。1度競り負けても、もう1回競りに行く。遠藤が優れているのは、そうしたアクションの継続性にある。第15節のアウグスブルク戦の後半アディショナルタイムで交代した以外は、フルタイム出場を続けている。リーグの全てのフィールドプレーヤーのなかで4番目に長く、汗を流してきた。もちろん、シュツットガルトのフィールドプレーヤーのなかでは最長だ。
だから守護神のコーベルも『シュツットガルター・ナハリヒテン』紙にこう語っている。
「遠藤は泥くさい仕事も責任をもってこなしてくれる。彼のような選手がチームメイトにいるというのは素晴らしいことさ!」