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遠藤航が闘将ドゥンガに肩を並べた? シュツットガルトで絶大な信頼と“約10億円の市場価値”を手にするまで
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byGetty Images
posted2021/03/06 17:02
シュツットガルトの遠藤航は2月27日のシャルケ戦で2ゴール2アシスト。最も注目される選手の一人となった
沈黙は悪となるドイツで遠藤は
ドイツでは沈黙は悪だ。
ヨーロッパのトップリーグのなかでも、群を抜いて選手がメディアに出て話す機会の多いブンデスリーガ。コロナ禍の今をのぞいて、試合後に取材機会が多いのは、それだけ選手が自らの口で発信することが求められているからに他ならない。
そんな国の文化にそまらず、ピッチのなかで結果を残すという生き方も一つかもしれないが、自己流だけを貫いて許されるのはスティーブ・ジョブズやズラタン・イビラヒモビッチくらいだろう。転職した会社員が「前の会社ではこうやっていたから」と新しい会社の方針を無視したら、総スカンをくらう。新しくチームに来た選手が、「前のチームでは……」なんてやったら、干されるだろう。
遠藤のように、自分の立場で必要なものを表現する作業は海外で活躍するうえで、とても大切なことだ。
にもかかわらず、ゴール数や出場試合数のように目に見えないから、これまで日本ではあまり語られてこなかったし、認識されてこれなかった。
そのあたりは、今季ブンデスリーガ初挑戦となっている堂安律が身体全体で感情を表現し、闘う姿勢を見せていることから日本で考えられている以上にドイツで評価されていることとも関係している。
ともかく、遠藤はこうやって自分の価値を高めてきた。
市場評価額は約10億2千万円にまで跳ね上がった
浦和レッズからシント・トロイデンへと移籍したばかりの25歳のとき、サッカー情報サイト『Transfermarkt』の市場評価額はわずか150万ユーロ(約1億9千万円)だった。
それが右肩上がりの上昇カーブを描き、28歳の今では800万ユーロ(約10億2千万円)にまで跳ね上がった。
2年半で自らの価値を5倍以上も上げてみせた。
このペースでいけば、さらにその価値は上がっていくだろう。
ただ、チームメイトも地元紙も、同じ日本人も、遠藤に対してコメントするとき、リップサービスが混じると考える人もいるかもしれない。
そんな人たちのために中立な第三者のコメントを最後に、載せておく。
遠藤が初めてキャプテンマークを巻いた試合の対戦相手、フライブルクの名将シュトライヒ(在任期間10シーズンは現役最多)はこう語った。
「遠藤はほとんどもうワールドクラスの選手だ。すでに複数のビッグクラブが彼の動向を注視している。私はそう確信しているよ」
ここまで読めばもうわかるだろう。遠藤があのドゥンガに肩を並べたという話は、決してリップサービスから生まれたものでも、大げさなものでもない。
遠藤自身が『闘って』、勝ち取ってきたものなのである。