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「そんなに若くないと思っています」19歳松岡大起はなぜそんなにストイック?【“育成のサガン鳥栖”の象徴】
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byJ.LEAGUE
posted2021/02/27 06:00
高校2年でトップチームに昇格し、今やサガン鳥栖で欠かせない選手となっている松岡大起。彼が後輩たちに見せた姿がユース躍進の要因の1つとなっている
京都、広島を受けたが合格通知なし
「象徴と言われるのは光栄ですが、僕だけじゃなく、アカデミー育ちの素晴らしい選手はたくさんいます。僕自身も熊本県から鳥栖に来た理由の1つに、先輩たちの影響を受けたことがありました。練習参加をしたとき、当時高3には田川亨介(現・FC東京)選手や石川啓人(現・レノファ山口)選手がいて、一緒にプレーをしてレベルの高さを感じましたし、2人ともユース時代から頻繁にトップチームの練習に参加していることも聞いていました。トップチームとの距離の近さにも魅力を感じていましたね」
松岡は、高校進学時に九州を出ることを考えていたという。しかし、京都サンガU-18やサンフレッチェ広島ユースの練習に参加するも、正式な合格通知は届かなかった。プロになるために高体連よりもJクラブユースを希望していた松岡のもとには、アビスパ福岡U-18、大分トリニータU-18、地元であるロアッソ熊本ユースからも誘いがきたというが、寮やグラウンドの施設環境、そして高3でプロデビューを飾った田川、石川の姿に刺激を受けて、鳥栖へやってきた。
「当時、金明輝(現・トップチーム監督)さんがU-18の指揮を執っていて、技術的な部分を磨く一方で球際の激しさや、最後まで走り切るというサッカーにおいて大事なハードワークの部分にもフォーカスを当てていました。ここなら絶対に成長できると感じたんです」
「サッカーがうまくなるためにやっている」
松岡がサッカーを続ける上で、大事にしている信念がある。それはどんな環境でも、自らの成長を求め続けることである。
「好きでやっているサッカー。だからこそ、すべてはサッカーがうまくなるためにやっていることに過ぎないんです。周りからよくストイックだと言われますが、別に苦行だと思ってやっているわけではなく、自分が楽しいからやっている。それが『きついな』と思うことでも、それで自分が成長することを想像したら楽しくなるんです」
「なんでここまでこだわるのか」と思われるほど自分自身を律する中でも、当の本人には「こうあるべきだ」「こうしなければならない」という過剰な義務感は一切ない。松岡にあるのは「サッカーを楽しむ」ことだけ。ただ、その楽しみ方が他と少し違うかもしれない。その先にある自身の成長にこそ、楽しさを見出している。
「今もなんですが、僕がやっているトレーニングは笑われることがあるんです(笑)。たとえば、タオルで重りを頭にくくりつけて、首を上下左右に動かす。または目だけ動かしたり、頭全体をグルっと回したり。(トレーニングの)見た目はハッキリ言って変だと思うし、よく(本田)風智には『俺は恥ずかしいから絶対にやらない』と言われますね(笑)。でも、僕の中ではこれをすることで頭の中がスッキリするし、身体をリセットできる。サッカーにいい影響が出るなら周囲になんて思われようと苦にならないですし、自分にとっては必要なことなんだと思います。
(ユニフォームの)シャツインのこともよく言われますが、これも昔からやっていることで、それが当たり前というか。逆にインしないと気持ちが悪いんです。別に見栄えを気にするとか、律儀とかそういうものではないです。何においても継続することを大切にしていますし、それが得意でもあると思っています」