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「そんなに若くないと思っています」19歳松岡大起はなぜそんなにストイック?【“育成のサガン鳥栖”の象徴】
posted2021/02/27 06:00
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph by
J.LEAGUE
育成のサガン鳥栖――最近、そんな言葉を耳にする機会が増えた。
ここ5年の育成年代の大会を振り返っても、鳥栖の下部組織の躍進が目覚ましい。2017年以降の成績を見てみると、U-15世代は日本クラブユース選手権で優勝2回、高円宮杯JFA全日本ユースサッカー選手権大会で優勝2回、準優勝1回。U-18世代は日本クラブユース選手権で優勝1回、準優勝1回。昨年度においてはU-15、U-18でダブル日本一を獲得するなど、育成年代でその名を轟かせている。
ここで特筆すべきは、ユース世代の成績だけではなく、下部組織から多くの選手がトップチーム昇格を果たしていることだ。すでにトップチームの貴重な戦力として定着し、「育成の鳥栖」の象徴的な存在となっているのがMF松岡大起、19歳である。
「まさに鑑のような選手」
高校2年生だった18年、天皇杯2回戦でトップチームデビュー。翌19年にはJ1第2節のヴィッセル神戸戦でリーグデビューを飾った。その年の6月にはクラブ史上初となる高校3年でのトップ昇格を果たすと、このリーグ戦23試合に出場し(うちスタメンが21試合)、レギュラーとして活躍。昨季はリーグ32試合出場(うちスタメンが31試合)と不動の主軸にまで成長を遂げている。
目覚ましい活躍を見せる松岡の存在は、当然、下部組織の選手たちにとって大きな憧れとなっている。U-18で指揮を執る田中智宗監督はこう語る。
「全寮制の中で、彼はピッチ内外で他の選手たちの模範となりました。現在の高1の選手の中には練習参加のときに見た松岡の姿がきっかけで鳥栖を選んだという選手もいるほど。彼はまさに鑑のような選手ですね」
高校進学と同時に鳥栖U-18に加入した松岡を近くで見てきた“後輩”兒玉澪王斗も刺激を受けてきた一人だ。彼もまた今季からトップチームに昇格する。
「1日のタイムスケジュールを自分でしっかりと管理していました。自由時間にパッと大起さんを見ると体幹トレーニングをやっていたり、食事でも栄養面などの細かいところまで気を配っていて、本当にストイックでした。大起さんがあそこまでやっているのに、僕らが手を抜くことなんてできないと思っていました」
鳥栖ユースに浸透しつつある「松岡モデル」。常に自分に厳しく、ストイックにサッカーと向き合う「育成の鳥栖」の象徴的存在の19歳は今、何を考えてプロ3年目のシーズンに挑むのか。今季への決意とともに、彼の心の内に迫った。