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「そんなに若くないと思っています」19歳松岡大起はなぜそんなにストイック?【“育成のサガン鳥栖”の象徴】 

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安藤隆人

安藤隆人Takahito Ando

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photograph byJ.LEAGUE

posted2021/02/27 06:00

「そんなに若くないと思っています」19歳松岡大起はなぜそんなにストイック?【“育成のサガン鳥栖”の象徴】<Number Web> photograph by J.LEAGUE

高校2年でトップチームに昇格し、今やサガン鳥栖で欠かせない選手となっている松岡大起。彼が後輩たちに見せた姿がユース躍進の要因の1つとなっている

久保建英に感じた「差」

 しっかりと自分を持った19歳。話を聞けば、その成熟度はすぐに理解できる。だが、そんな松岡をもってしても、苦しいと感じる時間もたくさん経験してきた。

 19年シーズン、スタメンの座を掴み、上々のプロサッカー人生をスタートさせた時、第3節で対戦したFC東京には同年代の“顔”久保建英がいた。

「同い年なのに堂々としていて、プレーの精度も高くて……正直、差を感じました」

 だが、この時以上にその差を痛感したのは、シーズン後半戦のことだった。コンスタントに出場機会を得ていた松岡だったが、チームは勝ち星から見放され、終盤戦では彼がスタメン出場した4戦とも勝ちなし。苦しい状況が続いていた。

「やることなすこと全部がうまくいかない感覚に陥ってしまって。周りは『18歳でスタメン』を褒めてくれるのですが、僕の中では『どうしたらうまくいくんだろう』と葛藤がありました。いろんな人に相談もしたし、本当に苦しかった。でもその頃、久保選手はリーグ前半戦を主軸としてプレーして結果を残してからスペインへ渡った。そこからヨーロッパのトップレベルの舞台で揉まれている。この1年間で、あのときに感じた差が歴然と広がったことがとても悔しかった」

センターバックも経験した昨シーズン

 悔しい思いを経験した翌年の2020年シーズン、松岡はもう一度自分を見つめ直した。「プロの舞台を戦ったことで、怪我をしない体づくりが重要だと学んだ」と、身体のケアに多くの時間を費やしたことで、1シーズンを怪我なく、ほぼフル稼働することができた。さらに複数のポジョションを経験したことで新たな発見もあった。

「一昨年はオフェンシブなポジションが多かったのですが、昨年はメインのボランチに加えて、右サイドバックやCBも経験させてもらった。『こういうところに立ってくれれば、ボランチは出しやすいんだな』と分かったし、CBだと1本1本のパスの重みが違いました。これまで持っていなかった感覚を得たからこそ、自分の得意とするコーチングの精度も上がったと思います。ピッチの上で状況や意図を仲間に伝えて、伝えきれないところは終わった後やハーフタイムにボードを使ってきちんと説明する。引き出しが増えたと感じますし、一方で自分のところで失点したシーンもたくさんあって、すべてにおいて1つのプレーの重みを感じたシーズンでした」

「同じことをしていても、結果は出せない」

 常に変化を求める松岡はこのオフ、今度はケアの時間を短くし、筋トレやサッカーの勉強に時間を割いた。

「前年と同じことをしていても、昨年以上の結果は出せないと思っているので、また違ったアプローチや意識を持つようにしています。もちろんこれまでやってきたことを変えるのは、すごく難しいことですし、ストレスや不安も生まれますが、それでも変えてチャレンジしていかないと次はないと思う。何かを変えて、それがうまくいかなかったらまた違うアクションを起こしたり、ときには元に戻すことも大切。そこは周りの意見を聞きながら、自分と向き合って導き出していかないといけないと思います」

 新しいトレーニングを取り入れ、逆に以前のトレーニングを復活させるなどして、「今の自分」をアップデートしていく。その姿も周囲からすれば“ストイック”に映っているだろう。だが、彼は笑いながら改めて口にする。

「すべて自分が楽しんでやっていますから。アプローチが違うだけで、僕が見据えているゴールは一緒なんです」

【次ページ】 トップでの結果が、良いサイクルを生む

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