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「パンツァー(戦車)」と呼ばれた屈強なMF、マテウスが語るリンクマンの重責【ドリームチーム選出】
posted2021/02/21 17:00
text by
アレクシス・メヌーゲAlexis Menuge
photograph by
Patrick Boutroux/L’Équipe
バロンドール・ドリームチームの守備的ミッドフィルダーおよび中盤のつなぎ役には、20人の候補者リストからシャビとともにローター・マテウスが選ばれた。両者のポイント差はわずか25。マテウスと3位アンドレア・ピルロの間には100ポイント以上のひらきがあるから、順当な選出であったといえる。
だが、マテウスは、あらゆる意味でシャビとは対照的だ。「パンツァー(装甲、戦車の意)」の愛称からもわかるように、屈強なフィジカルとアグレッシブさ、力強さで抜きんでていたと同時に知的かつ合理的でもあった。マテウスこそはドイツサッカーそのものを体現していた。キャリアの晩年はリベロとしてプレーし守備力にも定評はあったが、特筆すべきは攻撃力であった。とりわけドリブルとミドルシュートには定評があり、現役通算224得点は3列目の選手としては他に例を見ない。
アレクシス・メヌージュ記者によるマテウスインタビューを前後2回に分けてお届けする。今回はその前編だが、今日の日本では馴染のないポジションと番号の関係とポジションの呼称について、本文に入る前に少し補足したい。
日本ではブラジルに倣ってふたりの守備的ミッドフィルダー(ボランチ)を5番と8番として認識していることが多い。5番が守備的ボランチ、8番が攻撃的ボランチである。ところがヨーロッパでは、守備的ミッドフィルダーを6番、攻守のつなぎ役を8番、ゲームメイカーを10番の番号で呼ぶ。8番は日本でも1980年代ぐらいまではリンクマンという呼称で呼ばれていた。
冒頭にも書いた通り、フランス・フットボール誌が定義した中盤のこのポジションは、「守備的ミッドフィルダーおよび攻守のつなぎ役」である。後者については便宜上リンクマンという言葉を充てることにする。(全2回の1回目/#2に続く・肩書などは『フランス・フットボール』誌掲載当時のままです)
(田村修一)
「リンクマン」の誇り
――バロンドール・ドリームチームに選ばれた率直な気持ちは?
マテウス このチームに選ばれるなんて、これ以上の喜びはない。リンクマンというポジションは競争がとても激しかったから、現役引退から長い時間がたっているのに僕が選ばれるとは信じられなかった。候補者リストにはサッカー界の伝説的存在の名前しかない。まったく予想していなかったので、心から喜びをかみしめている。